2020 Fiscal Year Research-status Report
南部アフリカ西欧系社会集団の移動史料研究:19世紀前半接触領域の異文化間交流
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18K01037
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
水井 万里子 九州工業大学, 教養教育院, 教授 (90336090)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
辻本 諭 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (50706934)
和田 郁子 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (80600717)
大澤 広晃 法政大学, 文学部, 准教授 (90598781)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 移動 / 史料 / 長距離航路 / 南部アフリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度は前年度までに収集した史料の整理、加えて収集を計画した史料の現地調査(南アフリカ、イギリス)を実施する予定とした。昨年度末からの香港経由南アフリカ行きの航空便キャンセル、これに続く感染症の流行を理由とした渡航制限を受け、上記のうち史料現地調査を進めることはできなかった。このため、以下のように計画を変更して実行し、最終年度であった今年度からさらに1年間期間の延長を申請し認められた。 令和2年度内には、これまで集めた史料と移動史料の研究会で得られた知見をもとに、論文集『東インド航路と史料』(仮)の編集を開始した。ここでは、18-20世紀に長距離航路がつないだ世界各地の有りようと、これについて記した同時代の史料(それらを「移動史料」と置く)について明らかにされる。旅行記に加え、ヨーロッパからの訪問者である宣教師、国際商人、軍人という職業人が記した記述は職業的な目的で書かれたものも多い。これらは旅行記や探検記といった発見や出会いを目的とする旅の記述ではないが、長距離航路を辿りながら訪問した世界各地の状況を職業人が見分した観察の記録としてとらえることができる。さらに、本研究の課題である18世紀から20世紀にかけて南部アフリカの様子が描かれた史料研究を集めることで、「接触領域」における移動者とローカルな人々の交流と関係性の変容、社会の形成過程、支配と抵抗の在り方を明らかにしてきたこれまでの研究成果に新たな観点を複数加えることが可能となった。 これまでの研究成果から、南部アフリカの移動史料を対象とした本研究は、長距離航路上の島嶼部の研究、奴隷や移動する労働者の諸議論とも結びつくことも明らかになりつつある。上記の論文集によって発表される研究成果の一部が、地域的な広がりを持って今後のグローバルな歴史研究の展開に貢献することが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究は南部アフリカへの移動に関する史料の収集、分析を主目的とする。このため初年度から研究代表者、分担者がそれぞれヨーロッパ(イギリス、オランダ)と南アフリカの文書館等で史料収集を行うことを予定してきた。これまで十分に史料を収拾し、令和2年度に追加の史料を現地調査収拾する予定であったが、令和2年度を通して感染症の流行によって海外における史料収集は大きな制約を受け、当該年度に一度も現地の史料調査が実施できずに終わっている。このため、令和2年度は既に収集してきた史料の整理と、これに基づいた論文執筆、論文集編集にあて、残る史料収集が可能となる時期を待ちつつ1年間の延長を申請、受理された。 上記の論文集出版によって、南部アフリカに関わる本研究の成果の一部と、他地域の移動史料の研究が結びつくことが可能となったため、令和3年度に本書の合評会を兼ねたより広い地域を対象とする研究会を開催し、さらに議論を深める予定としている。 令和2年度の感染症流行による研究の遅れは、1年の延長期間に取り戻すことが可能で、この間論文集の出版と研究会を通じて当初計画を超えた展開と今後の研究の基礎が構築できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究においては、南部アフリカに関わる移動史料の収集と分析を実施し、その成果の一端を発表することを目的としてきた。感染症の流行による海外史料収集の計画から成果の講評に重点を置くようにし、これまでに収集済みの史料を中心とした論文集の編集発行に令和2年度からとりかかることができた。令和3年度に出版されることになる本論集では、南部アフリカに関する史料としてイギリスのメソディスト教会、イギリス陸軍、イギリス東インド会社、オランダ東インド会社に関する研究が発表される。これに加えて、インド洋におけるオランダ領、フランス領の移動史料、オランダ領ケープに関する最新の史料研究動向、長距離航路における知のリロケーションなど、東インド航路上の諸研究も発表されている。さらに、大西洋航路と東インド航路の接合点としての南部アフリカの位置づけについて中南米の研究と議論を結合しようとも試みている。加えて移動史料に表されている人々についても、南部アフリカに移動した研究対象とする人々が19世紀初頭以降中国や東南アジアからの自由・非自由労働者に広がっていることが明らかとなったため、当該時期の重要な背景となる奴隷制度廃止と結びつけて論じることが必要になった。このため、今後の研究では奴隷制の歴史や労働移動の歴史、女性の移民の歴史など新たな文献の収集・分析を通してさらに深めていく予定である。これに必要な史料収集を令和3年度に企図しているが、引き続き海外渡航の制限が続く場合、既に電子化された史料データベースの購入に方針を変更するべく選定中である。
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Causes of Carryover |
令和2年度はイギリス、オランダ、南アフリカでの海外史料調査を実施する予定であったが、感染症の世界的な流行、海外渡航制限を受けた所属大学からの海外出張停止措置によって一切の現地史料調査が予定通り実施できない状況であった。このため、海外旅費の多くを残して令和2年度を終えることとなった。令和2年度が計画の最終年度にあたったため、1年間の期間延長を申請し、これを許可されたことから、令和3年度に海外調査費が実現すれば助成金の使用が可能となる。 本計画における史料調査は平成31年度、令和元年(平成32年度)において研究成果の公刊に十分な段階に達していたため、令和2年度は研究成果の一部を論文集として出版する準備を行った。延長期間である令和3年度内に論文集『東インド航路の移動と史料』(仮)として出版予定である。令和3年度に予定している海外調査ができない場合は、さらに期間を1年間延長して、史料研究の対象として既に電子化されデータベースとなっている関連史料を新たに購入ひ分析する。
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Research Products
(3 results)