2022 Fiscal Year Annual Research Report
Basic research on the conversion of Jews in early modern Italy
Project/Area Number |
18K01038
|
Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
藤内 哲也 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 教授 (60363602)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
Keywords | ヴェネツィア / ユダヤ人 / ゲットー / 改宗 / 分離に基づく共生 |
Outline of Annual Research Achievements |
近世ヴェネツィアのユダヤ人によるキリスト教への「自発的」な改宗の事例に着目し、キリスト教徒とユダヤ人の動的・可変的で重層的・多面的な関係性を明らかにするという本研究の目的のもと、ユダヤ人による具体的な改宗事例を発掘するために、ヴェネツィア国立古文書館等での史料調査・収集を予定していたが、2022年度も実施できなかった。そこで、前年度までと同様、ユダヤ人に関する異端審問関係文書をはじめとした刊行史料やヴェネツィア史・ユダヤ史関連の研究文献の収集と読解を進めた。 こうした活動の成果として、2022年8月30日に東京大学で開催された2022年度イタリア中近世史研究会にオンライン参加し、「近世ヴェネツィアの改宗ユダヤ人と「分離に基づく共生」」と題する口頭発表を行った。この発表では、異端審問史料から抽出したユダヤ人の改宗事例について、故郷のスペインやポルトガルでの強制改宗を経験したのちにヴェネツィアに到来したイベリア系新キリスト教徒(隠れユダヤ教徒)と、従来からヴェネツィアのゲットーに居住していたアシュケナジによる「自発的な改宗」に分けて比較史的な考察を行った。その結果、キリスト教徒としてゲットー外に居住しながらも、ゲットー内のユダヤ人共同体との日常的な接触を維持するイベリア系新キリスト教徒と、生活手段の獲得や社会的上昇のために「自発的」に改宗したアシュケナジの間には、改宗の目的等に相違はあるものの、ともに近世ヴェネツィアにおけるキリスト教徒とユダヤ人の「分離に基づく共生」という原則を掘り崩し、分離を保証する境界を溶解させる作用を持つことを明らかにした。 さらに、イタリア史研究会編『イタリア史のフロンティア』(昭和堂)に「都市社会のなかのユダヤ人―レオン・モデナの『自伝』を読む」と題する論文が掲載された。
|