2020 Fiscal Year Annual Research Report
Research on Emperor Maximilian II's Religious Policies
Project/Area Number |
18K01039
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
渡邊 伸 京都府立大学, 文学部, 教授 (70202413)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 宗教改革 / 信仰平和 / 教会公会議 / マクシミリアン2世 |
Outline of Annual Research Achievements |
従来の皇帝マクシミリアン2世に関する諸研究は、彼が宗教改革に同調的ながら、強硬なカトリック擁護政策を採る叔父皇帝カール5世や従兄スペイン王フェリペ2世との関係、とくにネーデルラント情勢をめぐる両者との軋轢から、有効な信仰政策を打ち出せずに終わったとする否定的評価が通説であった。 しかし、公会議論に着目して帝国議会などでの彼の議論・政策を検討した結果、トレント 公会議に関する父皇帝フェルディナント1世の教会改革政策とそれに対する教皇庁の抵抗・対立関係をもとに、彼は教皇と距離を置く政策を採ったこと、そのため普遍的な公会議開催による信仰問題の解決という伝統的な方法ではなく、帝国内での信仰平和に新旧両派の合意を取り付けるという彼独自の政策をとったこと、このことが、アウクスブルク宗教平和を再確認する政策に繋がり、英仏などと同様の「国民教会」へ展開する可能性を開いたことを評価すべきであると考察できた。そして、その実現にあたって、とくに新教派側のザクセン選定侯アウグストの役割が重要であったという見通しを得た。 ここから信仰問題解決策としての公会議という伝統的方策を放棄したことが大きな転換となったこと、信仰平和がたんなる法的合意ではなく実質的な平和となるためには対立する双方が絶えず合意確認という手続きをとる必要があったことを確認できた。昨今の状況から成果公表に順次遅れが生じているが、この成果を現在とりまとめて公表に向けて準備中である。
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