2018 Fiscal Year Research-status Report
フランコ独裁体制初期における「国家カトリック主義」創出と受容をめぐる実証的研究
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18K01040
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
渡邊 千秋 青山学院大学, 国際政治経済学部, 教授 (00292459)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | カトリック / アクシオン・カトリカ / プロソポグラフィ / フランコ独裁 / 教皇庁 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度(平成30年度)には、スペインに渡航して、文献調査を実施、また研究者間の意見交換をおこなった。スペイン国立図書館やマドリード・新聞雑誌文書館などで、フランコ独裁政権期当時、カトリック教会関連団体が発刊していた機関誌などの閲覧につながったことは、研究上の大きな進展であると考える。 また、平信徒組織として体制との関係性が議論されている「アクシオン・カトリカ・エスパニョーラ」の文書を閲覧することができた。フランコ独裁体制初期の「国家カトリック主義(ナシオナル・カトリシスモ)」の研究を行うためには、同団体の活動を知ることは不可欠であり、文書の量も膨大であるが、今後、継続的に閲覧を続ける所存である。この一連の文献調査からは、カトリック平信徒、なかでも青年層・男性成人層の発言や行動に注目することによって、研究課題に関する論文執筆の手がかりをつかむことができた。 また、文献調査を通じて、カタルーニャにおけるカトリック教会の状況や平信徒の活動を追うなかで、実は内戦期のプロテスタント教会とカタルーニャ自治政府との関係性が、カタルーニャにおけるカトリック教会の政治的・社会的活動を知るうえで非常に重要であることも、新たな知見として獲得することができた。この点については、収集した資料を用いて論考を執筆・発表した。今後、カタルーニャのカトリック教会、平信徒の活動がマドリードのそれとどのように類似し、また異なるのか、比較することを計画している点からみて、重要な経験であった。 業務の関係から、参加予定だった2019年3月にイタリア・ボローニャで開かれたヨーロッパ宗教アカデミー(European Academy of Religion)のスペイン・パネルには出席できなかったが、この会議への参加を目標に行った調査やヨーロッパ在住の研究者との交流は、今後の研究のうえで重要な意義をもつと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ヨーロッパにおける人権保護の観点から個人データ保護の法律が施行されたことにともない、本研究における情報の使用について、既に計画・予定していた方法に影響がでる可能性を含め、方法を若干再考する必要がでてきたことによる。 調査上、研究協力を依頼する予定であった現地研究者の事情により、多少の遅延がみられている。 また報告のため出席予定であった国際会議、ヨーロッパ宗教アカデミー(European Academy of Religion)に学内業務のため欠席せざるをえなかったことも、遅れの原因のひとつであると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、教皇庁立サラマンカ大学図書館に管理を移管された「アクシオン・カトリカ・エスパニョーラ」の文書をはじめとして、フランコ独裁体制のもとでのカトリック平信徒の政治的・社会的活動に関するデータ収集を継続することが必要である。また、計画書で言及したように、本研究ではプロソポグラフィの手法を用いる一方で、一人ひとりの個人情報が特定されないようにするための方策をとる予定である。ただし、ヨーロッパでの法律施行によりデータを収集すること事態が困難である場合も生じ始めているようである。そのような状況にもかかわらず、想定外の部分で個人データを提供していただくケースにも恵まれている現状もある。必要に応じてさまざまな処置をとりながら、研究をすすめる所存である。 研究者間の意見交換の機会を広げるため、できれば2019年度内にヨーロッパから研究者を招聘し、日本の研究者とともにワークショップを開催したいと考え、現在詳細を交渉中である。これが実現できれば、フランコ独裁初期のカトリック平信徒に関する研究の現状を日本の研究者と共有する場を設けるだけではなく、より広い意味でのスペイン現代史研究、また聖職者ではない研究者の手による、ヨーロッパにおける宗教史研究の現状を共有していただく機会となるのではないかと考える。ワークショップの実施を通じて、この分野の国際的ネットワークの構築と発展に貢献したい。
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Causes of Carryover |
イタリア、ボローニャで2019年3月上旬に開催されたヨーロッパ宗教アカデミー(European Academy of Religion)のスペイン・パネルで報告予定であったが、学内での業務と日程が重なってしまい、欠席を余儀なくされたことに起因する。現在、この折のスペイン・パネル関係者とは緊密な連絡を継続してとっており、このような、研究上マイナスに作用することが多い状況をできる限りよい方向へ向けることができるよう、今後の本研究課題の国際的発展を目指して努力している。具体的には、研究代表者のスペインにおける文献調査関連費用や、当初の予定では2020年度に実施する予定であった国際的なワークショップを1年前倒して行うことを目指し、ヨーロッパから招聘する予定人員の費用にあてたいと考えている。
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Research Products
(3 results)