2020 Fiscal Year Research-status Report
フランコ独裁体制初期における「国家カトリック主義」創出と受容をめぐる実証的研究
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18K01040
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Research Institution | Aoyama Gakuin University |
Principal Investigator |
渡邊 千秋 青山学院大学, 国際政治経済学部, 教授 (00292459)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | カトリック / アクシオン・カトリカ / プロソポグラフィ / フランコ独裁 / 教皇庁 / スペイン / 内戦 / グローバル |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度はCovid-19の影響を大きく受けたといわざるをえない。報告予定であった学会(EUARE, イタリア・ボローニャ)は開催延期となった。またスペインにおけるアーカイブ史料調査は、渡航予定であった2020年3月以来中断したままである。 他方、緊急事態宣言下におけるインターネット上の研究者間交流は、以前よりも頻繁に行われていると考える。国内で、インターネット上で開催される研究会への参加回数が増えたのは当然のなりゆきといえるが、国外の学会・研究会等への参加の可能性がひろがったのは、Covid-19がもたらした「プラス」の部分であるといえるかもしれない。たとえば、スペイン、マドリードのカルロス3世大学で2021年2月9日・10日両日にわたって開催されたセミナー、「スペインにおける政治的カトリック信徒」への参加や、同じくスペイン、サラマンカのローマ教皇庁立サラマンカ大学が2021年2月末から3月中旬にかけて開催した連続講演会「スペインにおけるアクシオン・カトリカ史料について」への参加など、通常の対面形式であれば参加や意見交換など不可能であるような場にインターネット上で出向けたことは、大きな糧となった。 当初計画していた、フランコ独裁初期におけるカトリック平信徒の集合的なプロソポグラフィ研究は、渡航を延期するなかでアーカイブ史料へのアクセスが絶たれている状況では大きく進展しているとは言えないが、今期、すでにアクセスできていた資料を用いながら、これまで知られていなかった「聾唖者のアクシオン・カトリカ」という団体の活動を考察することができたのは一定の成果であると考える。 現状においては、ミクロレベルでのカトリック的組織形成・人の動きを再構築することで、本研究の本来的な目的であるプロソポグラフィ研究への基礎固めをおこなっている。渡航できる状況が戻ってくれるよう願うばかりである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
Covid-19の影響により、2019年夏季の渡航を最後に、スペインにおける現地調査ができていないため、現状では研究の進捗状況に遅れがみられる。とくに、サラマンカやアルカラ・デ・エナーレスの文書館が所蔵するアーカイブ史料へのアクセスを見込んだうえでプロソポグラフィの手法をもちいておこなう分析を予定していたため、現地アーカイブ史料へのアクセスが中断していることは、研究の行方を大きく左右している。同様に、この遅れには、報告予定だった学会が開催延期されたことも影響している。 しかしながら、このような環境がもたらすポシティブな面にも言及せねばなるまい。インターネット通信を活かすかたちで進められる個々の研究者間の交流は、時差という課題を残すとはいえ、国境を越えてさかんになっている。彼ら・彼女らから本研究に関連して、スペインにあるアーカイブ史料に直接アクセスできないあいだの研究方法の提案、本研究テーマについて当初計画していたのとはまた別のかたちで、同じテーマに光をあてるためのヒントを与えていただけたことは、たいへん大きな励みとなっている。 スペインへの実際の渡航ができない期間が今後どの程度継続するのか不明であるが、現在生じている遅れを取り戻すための方策を模索中である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の当初の目的は、フランコ独裁体制初期において体制システムの構築・安定化に貢献した精神的支柱としての「国家カトリック主義」の創出と受容を考察することであり、より具体的には、カトリック平信徒の動きをプロソポグラフィの方法を用いて明らかにするアプローチ方法を用いることで新たな知見を見出したいと考えていた。そのためにも、現地アーカイブ史料へのアクセスは研究進展に必要である。しかしながら、もうしばらくは国境を越えた人の移動はままならない時期が続くことを考慮し、日本にいながらにして入手可能な史資料をもちいることも視野に入れ、研究テーマへのアプローチ方法に若干の変更をかけようとしているところである。フランコ独裁体制下の平信徒のみでなく、カトリシズムのもつ生来的な、トランスナショナルな人的移動の状況を考慮にいれて、「国家カトリック主義」のなかでのスペイン人宣教師の活動にも着目するなら、彼らの日本での活動を再考察することをつうじて、間接的にではあるが、フランコ独裁初期におけるスペインに源を持つ「国家カトリック主義」創出と受容について考察することができるであろう。また、同時に、トランスナショナルに広がった彼らの影響力に関しても考察しうると考える。このように、現在は新たな史資料を使用する可能性を視野にいれたうえで、研究遂行を目指している。
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Causes of Carryover |
今期は、スペインにあるアーカイブ史料収集のための研究渡航、またイタリアで開催されるはずだった学会における報告のための研究渡航を予定していたが、Covid-19の感染拡大がおきたためにすべてキャンセルとなったことにより、未使用額が生じた。 今後、国境を越えた人の移動が可能になれば、速やかにスペインにあるアーカイブまで出向き、研究を遂行したいと考える。しかしながら、渡航がかなわないあいだは、以前と比較して大きく整備されつつあるネット環境を利用し、在スペインの研究者との意見交換をおこなうとともに、カトリシズムのトランスナショナルな広がりにも目を向けたうえで、日本国内での史資料収集を試みたい。また、できる範囲でコピーや電子ファイルの作成を依頼し、スペインに出向かずとも研究できる部分を広げたいと思う。日本国内にいながら入手できる文献収集の可能性を探り、研究遂行に励む予定である。
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Remarks |
Proyectos de I + D de "Generacion de Reconocimiento": PGC2018-099909-B-I00
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Research Products
(3 results)