2020 Fiscal Year Research-status Report
姉妹共和国と国民祭典―総裁政府期における「革命の輸出」
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18K01043
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
山中 聡 東京理科大学, 理学部第一部教養学科, 准教授 (80711762)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | フランス革命 / 国民祭典 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、コロナウイルスの感染拡大を受けて、海外での資料調査を行うことが全くできなかった。そのため、当初予定していた研究活動を行うことが極めて困難になった。しかしながら、報告者は、そうした状況においても、これまで取り寄せた資料を基に論文執筆を進め、学術誌に投稿することができた。残念ながら掲載はかなわず、修正を要求されることになったが、非常に的確な指摘であったので、それに基づいて修正作業を進めることにした。査読結果が届いたのが2021年2月末であるため、年度をまたいでの修正作業が続いているが、夏までには再投稿したいと考えている。 一方で、今年度は、学術論文以外の著作活動については、ある程度実り多いものになった。まず、報告者が執筆した著作が二つ刊行された(①金澤周作監修『論点・西洋史学』・担当箇所「フランス革命」、および②堀越宏一編『侠の歴史 西洋編 下』・担当箇所「アンリ・グレゴワール:フランス革命期、一級の革命家にして、孤高の聖職者」)。これらの著作によって、フランス革命史研究の進展において、一定の貢献をすることができたと考えている。その他、報告者は書評を二つ発表した(①書評「山﨑耕一著:フランス革命―「共和国」の誕生」、および②「〈啓蒙〉・〈革命〉・〈共和国〉の単調な結び付きを批判的に検証、多様な革命像を浮かび上がらせる試み―書評:高橋暁生編『〈フランス革命〉を生きる』」)。山﨑氏の概説書は、これまでのフランス革命研究を網羅的に整理し、最新の学説を注意深く吟味しながら書かれたもので、21世紀にふさわしい革命像を提示した名著であり、その特長を書評において紹介できたことは、手前味噌ながら、非常に有意義であったと考えている。また髙橋氏の編著も、非常に高い水準の論文集で、書評を発表できたことは、学界において大きな貢献になったと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
やはり今年度は、コロナウイルス感染拡大を巡る問題が、研究活動を進める上で大きな桎梏となってしまった。報告者の研究を進める上で、必須の事柄であるフランスへの渡航が極めて困難になったため、海外での資料調査を行うことが全くできなかったからである。そのため、今年度の研究が、当初の予定よりも遅れることになったことは間違いない事実である。その一方で、オンラインで入手できる資料に関しては、かなり意欲的に調査を進めることができた。結果、フランス国立図書館を始め、海外の図書館がオンラインで所蔵する資料を一定数を入手することができた。これらの資料に関しては大きな収穫があったと考えている。 また報告者は、海外での資料調査に行くことができない状況を受け、国内で可能な活動に注力し、前段で紹介した、オンラインでの資料調査によって入手した資料に基づいて、昨年度に執筆した学術論文のブラッシュアップに従事することにした。その結果を論文にまとめ、今年度の中ごろにに学術誌に投稿したが、残念ながら、査読を突破することができなかった。総裁政府期の国民祭典を全体的に俯瞰した上で、密度の濃い考察を心掛けたつもりであったが、あまりにも射程が広すぎて、一つ一つの考察が十分でなかったことが大きな反省点となった。このため、改稿中の論文では、総裁政府期を複数の時期に分け、複数の論文において、個々の時期を丁寧に検討することにした。その結果、これまで掘り下げていなかった、重要な事柄が浮かび上がり、より着実な考察を進められるようになった。今年度末までに、本文と注は完成したので、今後は微調整を重ねながら完成度を高めていきたい。 なお来年度において、コロナウイルス問題が劇的に改善し、海外渡航が自由に可能になるとは思えないが、そのことを想定した研究活動を進めていきたい。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」の箇所でも述べたように、今年度はコロナウイルス問題で海外渡航が不可能になったため、研究の遂行には遅れが生じた。現段階の状況を見る限り、来年度もウイルス問題が完全に解決して、フランスへの渡航が自由になるとは思えないので、今後はそれに応じた研究活動を展開したい。先にも述べたように、今年度に学術誌に投稿した論文の査読結果を受けて、論文を複数に分割することにしたので、まずはその一本目を来年度の前半までには完成させ、再投稿したい。 また今年度の末には、フランス革命史に関する優れた研究書籍が複数出版されたので、今後はそれらへの書評を執筆したいと考えている。こうした活動もまた、革命史研究に対する一定の寄与となることだろう。 さらには、今年度に投稿した論文を複数に分けることにした結果、新たな研究テーマが浮かび上がったので、それについての考察も同時並行で進めていきたい。なお、今年度において、報告者はオンラインによる資料調査に関して、大いに視野を拡大させることができた。それゆえ、来年度も日本にいながらにして、入手できる資料の発掘に努めたい。 最後に研究を推進させる技術的な方策に関して述べたい。従来、研究者の意見交換といえば、学会で顔を合わせることに限られていたが、コロナウイルス問題を受けてオンラインでの学会報告が普及したことは、報告者にとって重要な出来事であった。ZOOM等を使って資料を提示しながら意見交換することが可能になった以上、これを利用しない手はないと考える。国内にいる優秀なフランス革命史研究者とのオンラインでの意見交換を通じて、研究の深化に努めたい。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、ひとえにコロナウイルス問題を受け、海外への渡航が困難 になり、出張に関する研究費を使用することができなくなったためである。報告者は2019年度に海外渡航する計画を立てていたが、論文の投稿に注力する必要が生じたため、同年度は渡航を見送った。そして2020年度こそ、渡航しようと考えていたところ、コロナウイルス問題が世界中で深刻なものになり、フランスへの渡航は絶望的となった。さらに言えば、このウイルス問題を受けて、授業をオンライン形式に変更する必要が生じたため、その準備に忙殺されることになり、研究時間を確保することが困難になった。そのため、研究費の使用も滞ることになった。翌年度分に繰り越して請求した助成金を合算したものを使用するにあたり、やはり問題となるのは、2021年度も海外渡航が可能になるのか、不透明な点である。夏季休暇の期間はおそらく渡航が難しいと思われるが、冬季になると状況は変化するかもしれないので、その時期に渡航できるよう、準備を進めたい。また、日本で入手することができるフランス革命関係資料の確保にも努めたい。オンラインで入手可能な史料のなかには、決して廉価ではないものが含まれるため、計画的に使うことを念頭に置きつつ、最終年度において、意欲的な活動を展開したい。
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Research Products
(4 results)