2021 Fiscal Year Research-status Report
姉妹共和国と国民祭典―総裁政府期における「革命の輸出」
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18K01043
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Research Institution | Tokyo University of Science |
Principal Investigator |
山中 聡 東京理科大学, 教養教育研究院神楽坂キャンパス教養部, 准教授 (80711762)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 総裁政府期 / フランス革命 / 国民祭典 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度も、前年度に引き続き、コロナウイルスの感染拡大を受けて、海外での資料調査を行うことが全くできなかった。2020年度から2年連続、海外渡航ができなかったことになる。当然のことながら、こうした事態は、研究活動にも影を落とすことになった。だが今年度は、国内において入手できる史料に関しては、可能な限り集めることができたので、それらの史料の精査を進めつつ、まずは書評「ブォナローティの劇的な生涯を描き切った快作:ジャン=マルク・シアパ著、田中正人訳『革命家ブォナローティ伝』」を執筆した(2022年2月に『図書新聞』に掲載)。対象となった書籍は、世に言う「バブーフの陰謀」(1796年5月に露見した政府転覆計画。共産主義政権樹立を目指した革命運動といわれる)の首謀者の一人であるブォナローティに関して、現時点で最良の研究とされる書籍の邦訳である。その内容と特長を解説できたことは、革命期前半に比べて、量的に後れをとっている後半期の研究の振興に寄与し得る仕事になったと考える。 また2022年1月には、関西フランス史研究会第192回(再編第67回)において、研究発表「第3次総裁政府期における公民宣誓の改定と共和国建国記念日の祝賀」を行った(オンライン発表)。発表後の討論では、大変貴重な助言を頂くことができた。そのため、学術誌への投稿を目指している論文の修正作業が、大幅にはかどることになった。発表以前は、視点が複数混在して分かりにくい構成であった研究を、論旨を把握しやすいものへと改めることができたからである。助言してくださった研究者の方々のご厚意に報いるためにも、良い論文にしたいと考えている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
今年度もまた、コロナウイルス感染拡大を巡る問題が、研究活動を進める上で大きな障害となった。程度の差はあれ、多くの研究者が同じ課題に直面していると思うが、やはり、フランスでの史料調査が2年連続行えなかったことのダメージは大きい。前年度においても研究活動の遅れが生じたが、今年度はその深刻さが増した。 とはいえ、前年度から続けているオンラインでの史料調査には、一定の成果があった。また、議会史料だけでなく、革命家個人の著作を多数入手し、それらを精読することができた。このことによって、本研究課題の遂行に関して、今まで気づくことができなかった論点を見つけることができた。 以上に加えて、前年度から進めている投稿論文の修正作業も、かなり順調に進んだ。とりわけ、関西フランス史研究会での研究発表後に得た助言は、非常に参考になった。発表を実施するまでは、論文の修正に関して良い方策が見つからず、作業が停滞していたが、発表後の討論を通して、適切な解決策を見出すことができたので、大きな収穫となった。できるだけ早くに投稿することにしたい。 これらの事柄を総合すると、研究の遅れそのものは、前年度に比べて深刻になったが、国内で遂行できる作業に注力でき、学会発表によって、論文修正の道筋をつけることができたので、「やや遅れている」という評価が妥当であると考える。 なお、来年度こそは、フランスでの史料調査ができることを切望しているが、本報告書を書いている時点で、海外渡航が自由になるかどうかは、かなり不透明である。しかし、仮に渡航が困難になったとしても、日本において従事できる作業は数多くあるので、あわてることなく作業を進めたい。
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Strategy for Future Research Activity |
「現在までの進捗状況」の箇所でも述べたように、今年度もまた、コロナウイルス問題で海外渡航が不可能になったため、研究の遂行には顕著な遅れが生じた。コロナウイルス問題の推移を見る限り、来年度において、フランスへの渡航が自由になる可能性は、決して高いとはいえない。この点を念頭に置いた上で、研究活動を進める必要がある。まずは論文の投稿に向けた作業を進めたい。また、現在準備している論文の修正作業を展開する中で、いくつか重要な論点が派生することになった。したがって、来年度はこれらの事柄に関する作業にも従事したい。 以上に加えて、来年度はオンラインでの史料収集にもより意欲的に取り組みたい。今年度はフランス国立図書館を通した史料収集において、一定の成果を上げることができた。それゆえ、来年度も引き続きこの作業に従事するが、今年度の研究活動を通して、フランス以外の国の図書館、とりわけ姉妹共和国が存在したオランダの図書館にも、興味深い史料が存在することが分かってきた。それゆえ、来年度は関連する作業を進めたい。 なお今年度は、論文の修正に専心するあまり、学会発表の機会が減ってしまったが、来年度は可能な限り、学会・研究会発表にも取り組みたい。そして、研究課題に関連する研究書の書評に関しても、時間の許す範囲で、力を注ぐことにしたい。
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Causes of Carryover |
コロナウイルス問題で海外出張が一切不可能になり、研究費を執行する機会がなかった。2年度にわたって、海外渡航が出来なかったので、残額は増えている。来年度、夏季休暇中にフランスへの渡航が可能になるならば、そのために研究費を充てたい。
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Research Products
(3 results)