2018 Fiscal Year Research-status Report
Reconsidering American History through Transpacific Minorities' Perspectives
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18K01047
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
兼子 歩 明治大学, 政治経済学部, 専任講師 (80464692)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菅 美弥 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (50376844)
李 里花 中央大学, 総合政策学部, 准教授 (50468956)
佐原 彩子 大月短期大学, 経済科, 准教授(移行) (70708528)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | アメリカ合衆国 / アジア / 太平洋 / 人種 / エスニシティ / セクシュアリティ / センサス / 難民 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は以下のような実績を得た。 共同研究者4名の共通の活動としては、以下の通りである。18年6月8日に明治大学和泉キャンパスでミーティングを共同研究者4名で行い、2018年度の活動計画を確定するとともに2019年度の活動計画を立案した。6月22日にには、明治大学和泉キャンパスにて勉強会を開催、松坂裕晃氏(ミシガン大学・院)に、ブラック・パシフィック概念をめぐる研究動向についての報告をいただき、アフリカ系アメリカ人のアジア人および太平洋世界との関わりをめぐる歴史的研究についての知見を得ることができた。 18年12月15日には明治大学駿河台キャンパスにてミニシンポジウムを開催した。遠藤泰生氏(東京大学)に19世紀太平洋に対するアメリカ知識人の知と想像力をめぐる議論を、根川幸男氏(国際日本文化研究センター)には日系移民知識人の太平洋横断経験をめぐる議論を紹介いただき、さまざまな人間集団が移動し遭遇・交流する空間としての太平洋についての理解を深め、またそのような太平洋世界を捉える知の枠組みのあり方の歴史的展開に関する知見を得ることができた。 また、共同研究の各メンバーは、それぞれ以下のような研究活動を行なった。兼子はサンフランシスコでアジア系同性愛者運動団体の史料を調査し、同性愛運動が「汎アジア系」主体を立ち上げる経緯を検討した。李は日本・ハワイのコリアン舞踊についての調査を行い、移民マイノリティ文化形成を比較史的に検討、ニュージーランドの国際学会で発表した。菅は1870~1900年の米国センサス史料における異人種間の親密性に関する調査の実態を広範に検討した。佐原は米国カリフォルニア州パルアルトにあるフーバー・アーカイブス(スタンフォード大学)でInternational Rescue Committeeに関する史料調査を行い、成果の一部を日本アメリカ史学会で発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定された通り、順調に活動が進められたということができる。 2018年度の活動を通じて、本プロジェクトの基本的枠組みである「太平洋世界」「マイノリティ史」に関する知見を4名の共同研究者で十分に共有し、深めることができた。6月22日の勉強会ではマイノリティ史と太平洋世界の関係、特にアフリカ系アメリカ人史に関する知識を積極的に吸収することができた。12月15日は当初共同研究者+講師による勉強会を開催する予定だったが、勉強会企画をミニシンポに発展させることで、共同研究を外部参加者に開くことができた。その結果、外部参加者によるコメント・質疑を通じて、当初の予定以上に歴史研究の枠組みとしての太平洋世界概念に対する理解を深めることに成功した。 メンバーは、各自の研究のために必要な史料を収集するための海外での史料調査を十分に行うことができた。2019年度以降、新たな史料調査に基づく研究成果を生産することが期待できる。 また、枠組みに関する議論を通じて共通理解を深める作業にとどまらず、2018年度は各自が学会報告や論文などの形で、共通理解に基づく研究成果をアウトプットすることもできた。兼子は海外での共著、学会報告や一般向け雑誌等で成果の一部を公開し、菅は海外研究者との共著・講演を通じて、李は国内外の学会での報告と韓国での共著を通じて、佐原は日本での共著および学会報告を通じて、それぞれ研究成果を公表することができた。これらの成果発表への読者・聴衆からのフィードバックを通じて、プロジェクトの基本的枠組みに関する理解をさらに深めることもできた。 最後に、2019年度の活動のための計画を立て、順調に遂行することができた。すでに2019年度に計画している国際シンポジウムに関して、登壇予定者から報告の快諾を得て、報告内容について調整を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度の研究活動は以下のように進める予定である。 4名の共同での活動としては、2019年7月27日(土)に国際シンポジウムを明治大学駿河台キャンパスにて開催することを決定している。報告者としては、モン族系アメリカ人文学研究をリードするMa Vang(カリフォルニア大学マーセッド校)、国際養子縁組を通じたアジアからアメリカへの人の移動をめぐる研究を推進しているKit Myers(カリフォルニア大学マーセッド校)、同じくアジア・アメリカ間の国際養子縁組や韓国系アメリカ人史を研究するKim Park Nelson(ミネソタ州立大学ムアヘッド校)の3名を迎えることを予定している。共同研究メンバーは司会およびコメンテーターとして登壇することを予定している。 各自の研究としては、兼子は引き続きアジア系アメリカ人の同性愛者権利団体に関する史料調査を行うとともに、史料の分析を進める。また、アメリカにおける非白人女性のアイデンティティと権利をめぐる論文を刊行する予定である。菅は1870~1900年のセンサス調査票のほか、異人種結婚をしたと思われる人々の日本側の査証・個人記録・書簡等を入手し、突き合わせることで個人史の検証を進める予定である。李は2018年度に引き続き日本およびハワイのコリアン舞踊の調査を進めるとともに、またハワイのアジアパシフィックダンスフェスティバルおよびコリアン・ディアスポラをめぐる国際学会(於オーストラリア)にて研究成果を報告する予定である。佐原は2018年度の史料調査に基づく研究の成果を公表すべく、論文の執筆を行う予定であり、また11月には日本の難民支援活動に関するシンポジウム(於上智大学)での登壇を打診され、報告を行う予定である。
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Causes of Carryover |
2019年度には国際シンポジウムを開催するために3名の海外研究者を招聘する必要があった。人選を進めた結果、3名をアメリカの地方都市より招聘することになり、当初予定していたよりも航空運賃等が多くかかることがわかったため、2018年度の予算を若干残して、2019年度の予算に組み入れ、確実に航空運賃・宿泊費・謝金を捻出できる体制を整える必要があると判断した。 そこで、2019年度の予算は全体でおよそ122万円となることから、招聘研究者のための交通費を75万、宿泊費を22万5000、謝金を21万として、残りの3万9000円を消耗品その他に充当することとしたい。
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