2020 Fiscal Year Annual Research Report
Elucidation of the consensus building process between princes and their vassals in the estates of pre-modern Europe
Project/Area Number |
18K01048
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
堀越 宏一 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (20255194)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 中世ヨーロッパ史 / 近世ヨーロッパ史 / ロレーヌ / 身分制議会 / 租税 |
Outline of Annual Research Achievements |
バール=ロレーヌ公領の身分制議会の歴史に関して、先行研究とすでに部分的に収集していたムルト・エ・モゼール県文書館の古文書の分析を行い、15世紀後半から16世紀前半にかけての時期の「保証状 lettres de non-prejudice」という史料類型の概要を調査した。 保証状とは、ロレーヌ三部会による課税同意に続いて、その直後にロレーヌ公側から被課税者(しばしば身分毎に)に対して発行される開封勅許状であり、同意された課税承認が乱用されないことを保証する文書である。既に1437年2月の保証状や1464年11月の保証状では、この課税が一度だけであり、これを先例としないことや以後、これ以外の援助金や税を公側が要求しないことなどが明記されていた。 15世紀末からは、保証状の内容が詳しくなる傾向がある。そこでは、一般的に、以下のような条項が含まれていた。1.臣民から同意された金額の確認。2.それが臣民の厚意による贈与であり、今後、臣民に損害を与えるものになってはならないこと、即ち、今回支払われた税を口実にして、公の権限で別の類似の課税を行わないこと。3.家臣が、その領民に対して慣習的に認められている特権を行使すること、即ち、領民が支払わねばならないような税について、彼らに代わって、家臣が三部会に出席して投票すること。 関係者は、その文言や内容が完全で、明確であるかどうかに関心を払っていると同時に、ロレーヌ公と臣民双方の権利や主張が併記されている事例もある。加えて、三部会で課税が承認された後には、公は臣民に謝意を表明するという慣行もあった。 このように、保証状とは、課税について、君主による権力濫用を抑制する契約書的文書であり、その内容は、イングランド議会とも、フランス三部会とも異なる、バール=ロレーヌ公領の身分制議会における君臣間の交渉の姿を明らかにしてくれるのである。
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Research Products
(2 results)