2020 Fiscal Year Research-status Report
権力分有の変遷から描く補完的ヨーロッパ史:エストニア、スペイン、モルドヴァの事例
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18K01049
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
小森 宏美 早稲田大学, 教育・総合科学学術院, 教授 (50353454)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥野 良知 愛知県立大学, 外国語学部, 教授 (20347389)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | エストニア / カタルーニャ / 自己決定権 / 権力分有 / マイノリティ・マジョリティ関係 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度は当初の計画では本研究課題の最終年度にあたっており、カタルーニャ(スペイン)調査および現地での意見聴取と研究成果の共有を行う予定であったが、新型コロナウイルス感染症拡大の影響から渡欧ができず、研究計画を大幅に変更する必要が生じた。 上記のような状況から、2020年度は、メンバー内での研究成果の共有はメイルを利用したものに限定し、個別に学会等での報告を行った(学会発表参照)。 さて、本研究の根源的な関心は、①固定的でないマジョリティ・マイノリティ(以下、M・M)関係、②権力分有の捉えられ方とその実践の歴史的な変遷にある。①については、本研究で取り上げる3事例(エストニア、スペイン、モルドヴァ)のいずれについても、M・M関係は歴史の中で入れ替わり、その内実も流動的であって、アイデンティティの輪郭にも揺れがあることが指摘できる。また、②に関しては、そもそも権力分有は、マイノリティに対する寛容さの表れとして解されやすいが、その実態を見るならば、冷厳な政治的判断と歴史の偶発性が実現を左右する可能性も見逃せない。こうしたM・M関係の複雑さ及び理念や規範と現実政治の絡み合いについて、近年ロシアの外交政策の一つを示すPassportizationの概念を援用しつつ、しかしエストニアではそれが、紆余曲折を経ながら、また当初の意図にそぐわない形とはいえ、一定程度の社会統合を促進していることが明らかにされた。一方、カタルーニャ問題については、自己決定権についての競合する理解やその行使の可能性をめぐる議論が続いており、膠着状態への打開策が見いだせない状況であることが指摘される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2020年度に予定していた研究代表者と分担者、協力者によるカタルーニャ(スペイン)での現地調査および意見聴取・成果共有等は、新型コロナウイルス感染症拡大の影響から、渡欧が不可能となったため実施できなかった。当初の研究では、1年目に代表者と分担者がそれぞれの研究対象地で現地調査を行い、2年目に全員でモルドヴァ調査、3年目に全員でカタルーニャ(スペイン)調査を実施する予定であったが、終了年度の現地調査および成果共有ができなかったことになる。このため研究期間の1年延長を申請し、認められてはいるものの、2021年度についても現地調査等の見通しは現時点では不透明である。
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Strategy for Future Research Activity |
2020年度実施予定であった現地調査が可能な環境が整えば、カタルーニャ(スペイン)現地調査および意見聴取・成果共有を行う。他方、もしそれが不可能である場合には、オンライン会議システムなどを利用して研究成果を本研究メンバー外とも共有する機会を設定し、総括行う。 2020年度までの研究の中で浮かび上がってきた自己決定権(個人・集団)に関する理解と行使、またその制度化や外的承認は、本研究の目的に鑑みて重要な論点となるため、これを柱として研究成果をまとめたい。
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Causes of Carryover |
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、研究計画の中で予定されていた現地調査等が実施できなかったため次年度使用額が発生した。2021年度中に現地調査等を実施できる環境が整えば、当初の研究計画に従って実施する。
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Research Products
(3 results)