2018 Fiscal Year Research-status Report
近世東アジアにおける陶磁器流通・消費動態に関する考古学的研究
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18K01058
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
堀内 秀樹 東京大学, キャンパス計画室, 准教授 (30173628)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 貿易陶磁器 / 北港遺跡 / 福建・広東諸窯 / 分類 / 流通 / 消費 / 清朝 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は研究初年度であり、東南アジア流通ブロックの消費状況の解明のために中国清朝期の貿易拠点である台湾雲林県北港遺跡の調査を中心に行った。北港出土資料は、この研究の核心であり、出土資料の器種、器形、文様、推定生産地、技法などの属性をマルクマールに分類し、数量的にデータ化を行った。調査の中心メンバーは、本研究代表者である堀内の他に、研究連携者の台南藝術大学の盧泰康教授、台湾大学黄川田修助理教授、専修大学教授髙島裕之教授、東京都埋蔵文化財センター長佐古真也氏、練馬区ふるさと文化館小林克館長である。 その結果、北港遺跡の資料の中心である福建・広東産の貿易陶磁器の中に、日本本土や沖縄から出土していない多くのバリエーションが確認された。これは需用される器種や質の相違から、主たる供給地が異なり、陶磁器流通が影響されていることによると思われるが、こうした相違点が本研究の分析視点となる。特にこれまで指摘されていなかった施文や整形技術に関する知見が多く確認できたことは、分類を標準化し、時代や地域的な分布の把握と説明する上で重要な成果であった。 また、これと平行して消費遺跡として東南アジアブロックとの境界域と位置づけられることで重要な2019年度調査予定の琉球や生産遺跡として朝鮮南部諸窯、中国景徳鎮窯、福建・広東諸窯の状況を国内外研究協力者と情報交換を行った。東アジアおよび日本の貿易陶磁器の流通を考える際に近隣諸国の生産・流通・消費動態は重要であり、特に日本に近い消費地である琉球、台湾、韓国などの状況把握は不可避である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
北港遺跡出土資料が、想定より量的に多かったことと研究協力者の中で調整しつつ行った関係で、調査の手順・方法を一部変更し、2018年度に予定していた台南地域内における物資集散地遺跡である台南市麻豆港遺跡の調査を2019年度に順延し、北港の調査を優先することとした。 2018年度の計画のうち海外現地調査について、研究関係者で事前協議を台湾で6月18日(月)、日本で6月27日(木)に行ない、調査協力者間の調整・情報共有を図った。現地調査は、8月27日(月)~9月5日(水)の9日間の日程で、堀内、長佐古、髙島、小林、黄川田、盧を中心に、現地アルバイトを雇用し、予定より日数と人数をかけて行った。本年度は、皿と共に最も多く出土している磁器碗、坏類を中心として行い、これまでに500分類程度の調査を終了したが、これは出土磁器全体の3/4程度に該当する。2018年度末には、次年度の調査に向けての大まかな情報共有を終了し、北港調査は終了できる予定である。 この他、2019年度に持ち越した麻豆港遺跡、および淇武蘭遺跡、社内遺跡、琉球の調査も日程調整を行っている段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究の目的、計画に沿って以下のように進行していく予定である。 ・2019年度:資料調査は、台湾北港調査を終える予定である。2018年度と同程度の調査体制で行うと共に2018年度に行えなかった麻豆港遺跡および宜蘭県淇武蘭遺跡、の出土資料調査を予定している。ただ、これらの調査は量的に多く本研究の中心となる北港遺跡出土資料調査の進行と勘案しながら調査年度、方針などの調整をして行いたい(海外旅費、謝金)。国内出土資料調査は、近年出土資料が増加した琉球首里城および那覇の生活遺跡出土の貿易陶磁器を予定している(国内旅費)。 その他、通信費、書籍費(その他)を予定している。 ・2020年度:台湾淇武蘭遺跡、社台遺跡の最終調査を行うと共に中国広東省潮州窯、福建省徳化窯、東渓窯などを中心に生産状況の現地調査を予定している(外国旅費)。国内では、琉球古墓出土資料の現地調査を予定している(国内旅費)。 また、2020年度は最終年度にあたるので、本研究に対する報告書の刊行と報告会を開催する(人件費、その他)。報告書は、北港調査を行った分類や数量分析の基礎データをそこから得られた成果をまとめる予定である。報告会では、台湾、沖縄の遺跡出土資料の考古学的研究報告、流通や消費の様相とその歴史的背景に視野をおく報告を予定しており、日本の本研究の協力者と台湾、沖縄から研究協力者を招聘しての開催を予定している。 その他、通信費、書籍費(その他)を予定している。
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