2018 Fiscal Year Research-status Report
遺跡出土動物骨の形質を用いた沖縄におけるブタ飼育・利用の歴史的プロセスの復元
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18K01061
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
新美 倫子 名古屋大学, 博物館, 准教授 (10262065)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ブタ / 形質 / 沖縄 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度は、主に沖縄本島とその近隣の島々において、中世~近世の遺跡出土資料を中心に、3000点以上のイノシシ類遺体の形質の観察・計測を行った。特に沖縄本島の東村跡と屋比久グスクでは、出土したすべてのイノシシ類遺体について、詳細なデータを得た。これらの観察・計測の結果、以下の成果が得られた。 1)中世~近世の東村跡と屋比久グスク出土資料については、イノシシ類全体中のブタとイノシシの比率を推定することができた。両遺跡の資料では、いずれもイノシシはほとんど含まれておらず、ほぼすべての資料がブタであると考えられる。2)同様に東村跡と屋比久グスク出土資料については、出土イノシシ類(ブタ)の年齢構成を明らかにできた。3)形質でブタとイノシシを区別する、あるいは異なるタイプのブタ同士を区別するための新たなチェックポイントを抽出することができた。これまで、本州~九州で出土する弥生時代ブタは、頭部(頭蓋骨・下顎骨)と第一頚椎の形態では野生イノシシと相違点があり、区別することができるが、それ以外の四肢骨等では違いがはっきりせず、区別できないとされてきた。しかし、これら新たなチェックポイントには、頭部に見られるものに加えて四肢骨に見られるものも含まれる。4)当該地域の遺跡出土資料には、互いに形質の異なる複数タイプのブタが含まれており、タイプによってその出現時期も異なることを明らかにできた。 これらの成果の一部は、屋比久グスク発掘調査報告書に「2015年度調査出土の動物遺体」として公表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
沖縄本島とその近隣の島々の遺跡出土資料について、新たなチェックポイントを抽出できたことと、複数タイプのブタの存在とその出現時期が異なることを確認できたのは2018年度の大きな成果であった。これにより、2019年度以降の形質の分析と年代測定に関して、方向性を決めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2018年度中に形質分析を行ったが放射性炭素年代測定を実施しなかった出土資料について、2019年度はまずこれらの年代測定を上半期に順次実施する。そして、形質分析については、沖縄本島とその近隣の島々に加えて先島諸島の資料についてもとりかかり、並行して年代測定も実施する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じた理由は、形質分析を行った出土資料の放射性炭素年代測定を2018年度中に実施しなかったことである。これは、2018年度には形質分析を進めるのと並行して測定対象となる試料の選出を行ったものの、年度の下半期は測定委託料が繁忙期料金となって高騰するので、これが比較的安い閑散期料金となる2019年度上半期に入るまで待っていたためである。そこで、2019年度はまずこれらの資料の年代測定を上半期に実施する予定である。
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