2018 Fiscal Year Research-status Report
Elucidating the human activities and environmental changes at the foot of Mt Daisen through systematic soil sampling and analysis
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18K01065
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
松本 直子 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (30314660)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邉 正巳 島根大学, エスチュアリー研究センター, 客員研究員 (80626276)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 縄文時代後晩期 / 焼土遺構 / 黒ボク土形成 / 植物珪酸体分析 / 古環境復元 / 人間による植生干渉 |
Outline of Annual Research Achievements |
計画通り、鳥取県西伯郡大山町岩伏し遺跡で2018年9月に発掘調査を実施した。発掘調査の成果として、第8トレンチの南側を中心とする焼土遺構の状況がある程度判明してきた。赤褐色化した黒ボク層は炭化した木片を含むこと、ブロック状ないし層状の明赤褐色土を伴うことから、かなりの規模の燃焼によって焼土が形成されたと見られる。現状で復元される遺構の大きさは住居跡とみてもよさそうであるが、床面がほとんど明らかになっていないため可能性に留まる。火が焚かれたと思しき地点も確認されておらず、遺構の性格については来年度以降の調査で検討する必要がある。 赤褐色化した黒ボク層より、後期末から晩期にかけてのものと見られる黒色磨研土器が出土したことから、遺構の時期についての手がかりが得られたことは重要な成果である。この時期の黒色磨研土器はこの地域では稀であり、地域間交流についても貴重な手がかりとなる。それに先行する凹線文系土器と判断した土器は、いずれも小片である上に作りが粗く、同定が正しいかどうかは引き続き検討する必要があるが、この同定が正しいとすれば、後期後葉から晩期にかけて継続的な活動があったことを示す。 発掘調査と並行して、遺構検出地点を中心に10mメッシュを組んで合計12本のボーリングサンプルを採取した。層相観察の結果、下位から砂礫層、ローム、漸移層、黒ボクという一連の層相変化が認められた。12本中3本は、砂礫層、ロームからいきなり「造成土と考えられる乱れた状態の黒ボク」に変わることから、分割の対象から除き、残りのサンプルを 層相によって5~1cmで分割し、更に植物珪酸体、花粉、微粒炭(予備)用に分割した。トレンチ壁面から採取したサンプルについて植物珪酸体分析を実施し、漸移層から黒ボク形成期にかけて草原環境が形成・維持されており、人間による植生干渉があった可能性があることが分かった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通りに発掘調査と土壌サンプル採取を実施した。調査期間中に台風や秋雨により作業不能となることが多かったこと、予想以上に遺物が出土したことから、発掘調査の進捗は予定より遅れたが、一定の成果を上げることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度も予定通り発掘調査と体系的な土壌サンプリングを実施するとともに、土壌サンプルを分割して、花粉分析、微粒炭分析、植物珪酸体分析を進める。また、発掘調査で採取した炭化物の放射性炭素年代測定も実施する。
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Causes of Carryover |
植物珪酸体分析経費が予定より若干安かったために生じたものである。小額であり、次年度経費の一部として使用する。
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