Silk remains from china,the Spring and Autumn period and the Warring States period at Yayoi period

2018 Fiscal Year Research-status Report

• Project/Area Number: 18K01076
• Research Institution: Nara University
• Principal Investigator: 小林 青樹 奈良大学, 文学部, 教授 (30284053)
• Project Period (FY): 2018-04-01 – 2021-03-31
• Keywords: 秦漢時代以前 / 弥生時代 / 絹繊維

Outline of Annual Research Achievements

本研究は、中国の秦漢時代以前、弥生時代の日本列島に流入した絹繊維資料の同定・分析を行い、その系譜と歴史的意義を検討するものである。かつて日本列島の絹繊維資料の出現時期は、弥生時代前期末から中期の初め頃（紀元前３世紀）とされ、前漢の時代に周辺地域（中国南部など）から流入したというのが定説であった。日本産の絹もこの頃に作られ始めたとされる。しかし、２００３年以降、弥生時代の年代の見直しがなされ、この時期の年代は紀元前４世紀中頃となり、秦漢時代以前の戦国時代に相当することが判明した。この新事実とこれを裏付ける新資料の発見を受け、本研究は、秦漢時代以前に燕国などから絹繊維資料が流入した可能性を実証するため、国内の絹繊維資料を中心に科学分析を実施し、さらに中韓の絹繊維資料の再検討も行う。これにより、国内での絹製品の受容と製作開始の歴史は大きく書き換えられ、中韓における当該研究にも大きな影響を与えると考えられる。
本年度の研究では、秦漢期以前に併行する弥生時代前期後半から中期中葉頃の日本列島における絹製品を念頭に、弥生時代における絹製品の所在調査と、資料の収集をおこなった。その結果、弥生時代中期前半段階に相当する資料が北部九州を中心に出土していることが判明した。そこで、実物の調査については、北部九州と韓半島での調査実施を予定することとなったが、微量な破壊分析は実施できないことになり、本研究チームでは、高性能のマイクロスコープによる表面観察によって絹製品の素材の同定と繊維の構造解析をする方針に転換し、テスト作業を行って次年度の国内外における調査実施に備えた。

Current Status of Research Progress

3: Progress in research has been slightly delayed.

Reason

実際の調査にあたって、当初は微量な破壊分析によって、繊維組織の顕微鏡下での分析を予定していたが、絹製品関連遺物を所蔵する国内外の研究機関との協議の結果、微量な破壊分析は実施できないということになった。そこで、本研究チームでは、表面観察によって絹製品の素材の特定と繊維の構造解析のため、高性能のマイクロスコープを購入し、古墳時代の鉄製品に付着する絹製品を比較対象として素材調査のためのテストを実施した。その結果、表面観察でも製品の素材の同定は可能であることが明らかとなったが、こうした作業の検証に時間がかかり、国内外の調査実施は次年度以降となった。

Strategy for Future Research Activity

今後は高性能のマイクロスコープを用いて、青銅製品や鉄製品といった金属器に付着した絹繊維資料などについて、表面観察によって絹製品の素材の特定と繊維の構造解析を行う。本年度は、国内では、北部九州における金属器に付着した絹繊維資料について、観察と分析を行い、また、韓国における金属器に付着した絹繊維資料についても検討を行う。あわせて、弥生時代の金属器に付着した絹繊維資料は、弥生時代中期後半以降に急増するので、それらの資料についても収集を行う。これらの資料は、いずれも秦漢時代以降のものであり、これらの検討によって、秦漢時代以前と以後での様相の把握が可能となろう。

Causes of Carryover

当初は微量な破壊分析によって、絹と思われる繊維組織の顕微鏡下での分析を予定していたが、絹製品関連遺物を所蔵する国内外の研究機関との協議の結果、微量な破壊分析は実施できないということになった。そこで、本研究チームでは、表面観察によって絹製品の素材の特定と繊維の構造解析のため、高性能のマイクロスコープによる分析に転換した。その結果、繊維組織の顕微鏡下分析にかかる人件費や、当初予定していた国内外の研究機関での調査が実施できなかった。次年度使用額については、マイクロスコープによる調査を予定していた国内外の研究機関の一部で、良好な絹と思われる繊維を所有する機関に限定して調査を実施し、あわせてマイクロスコープによって撮影した画像の解析のための機器などの購入に使用する。