2019 Fiscal Year Research-status Report
旧石器時代サヌカイトの流通に関する体系的研究:東部瀬戸内地域を中心に
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18K01079
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Research Institution | Kashihara Archaeological Institute , Nara prefecture |
Principal Investigator |
光石 鳴巳 奈良県立橿原考古学研究所, 調査部調査課, 総括研究員 (70263548)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
白石 純 岡山理科大学, 生物地球学部, 教授 (70434983)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 旧石器時代 / サヌカイト / 原産地推定 / 蛍光X線分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、旧石器時代の遺跡で出土するサヌカイトについて、後世に生じた欠損部を利用して蛍光X線分析を実施し、原産地推定をおこなうものである。東部瀬戸内地域のうち、おもに兵庫県内の資料について分析を進めてきている。これにより、代表的なサヌカイトの二大原産地である二上山と五色台をめぐる旧石器時代の集団関係を、とくに石材流通の観点から詳細に復元することを目的としている。2019年度については、主要な成果は次の3点である。 (1) 兵庫県立考古博物館との共同研究を立ち上げ、同県内の出土資料について、分析候補(試料)の選定を進めた。これにより、七日市遺跡(第3次調査)について最大で51点、板井寺ヶ谷遺跡の上層石器群について最大で45点、下層石器群について最大で113点が分析可能という結果を得ている。これらのうち、七日市遺跡(第3次調査)の分析を実施した。分析結果については精査、検討中であるが、二上山産サヌカイトが優勢な状況となっている。 (2) 中四国地方の石器群から、帝釈馬渡岩陰遺跡(広島県)、大河内遺跡(岡山県)について分析候補の選定をおこない、また、高見Ⅰ遺跡(愛媛県)についても地元研究者に依頼して分析候補を選定した。これらの資料については、将来的に順次分析を実施したいと考えている。 (3) 研究開始当初からの課題であった、香川県五色台地域のサヌカイト原産地での踏査を実施し、主要なエリアでの試料採取をおこなった。これにより基礎資料の強化を計ることができる。 以上のように、具体的な分析例は1石器群にとどまったが、分析候補の選定を進めて分析実施に備えるとともに、原産地データの蓄積を進めることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究開始2年目の本年度は、兵庫県立考古博物館との共同研究立ち上げにより、兵庫県内資料の分析を大きく進める予定であった。しかし、10月に七日市遺跡(第3次調査)の資料について分析を終えたものの、11月以降、利用してきた岡山理科大学の分析機器が老朽化により故障し、使用不可能な状況となった。 このため、分析候補を選定したうちでも、とくに板井寺ヶ谷遺跡(兵庫県)、高見Ⅰ遺跡(愛媛県)、帝釈馬渡遺跡(広島県)については、分析実施に向けての調整を進めていたにもかかわらず、分析をおこなうことができなかった。 また、年度の終わり頃に追加の分析候補選定作業を組み込む予定であったが、新型コロナウィルス蔓延防止対策の影響もあって、実施を見送った。このこともあり、分析候補を選定できた石器群も、当初の想定より少数に留まっている。 分析機器が使用できなくなったことについては、本研究の根幹に関わることであり、計画の見直しが必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
これまで利用してきた機器が使えなくなったことにより、代替の機器による分析実施を考慮する必要がある。これまでは、同一機器によって分析することで測定結果の平準化を図るという方針だったが、この方針は変更せざるを得なくなった。現段階で、岡山理科大学での代替機器導入については未定である。 今後は、複数の機器による分析結果を横断的に利用することを前提とした作業を進めることにならざるを得ないため、別の機器による試験的な分析実施等について検討中である。このことは、本研究を進める上で、ある程度分析結果を蓄積した後に確立すべき方法論と考えてきたが、当初計画より前倒してこの問題に取り組むことになる。これまでに使用してきた原産地の試料を、同様に基準試料とすることで、実現可能だと考えている。 なお、分析候補の抽出については、並行して進めるおく必要があると考えており、播磨地域の石器群を優先に、複数組を選定する予定である。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたことについては、大きく2点の理由による。1点目は、利用してきた分析機器の故障によって分析件数が減少したことである。2点目は、新型コロナウィルス蔓延防止対策の影響から、年度末近くに予定した分析候補選定のための旅行を延期としたことである。これらの理由により、旅費の執行金額が減少した。 当面は、分析機器の故障に起因する問題を解消することを優先して研究を進めていく。当該金額については、これらの連絡調整に係る経費、あるいは分析候補選定のための旅費に充当する計画である。
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Research Products
(6 results)