2018 Fiscal Year Research-status Report
馬具生産・流通構造解明を通じた日本古墳時代・朝鮮三国時代の馬匹生産体制の復元
Project/Area Number |
18K01083
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Research Institution | Kyoto Prefectural University |
Principal Investigator |
諫早 直人 京都府立大学, 文学部, 准教授 (80599423)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 馬 / 馬具 / 生産体制 / 日本古墳時代 / 朝鮮三国時代 / 東北アジア |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、日本列島古墳時代と朝鮮半島三国時代の馬具から、馬匹生産構造を復元するための方法論を練磨するとともに、多分野で個別的に進められて研究成果を再構成し、体系的かつ一貫性のある馬匹生産像を構築することを目的とする。具体的には両地域から出土する馬具に対する徹底的な資料観察と東北アジア規模での比較検討にもとづいて、古墳時代/三国時代における馬具の生産・流通構造を解明し、その成果をもとに馬匹生産の現場を含む消費地の様相を検討する。また馬具だけでなくそれが出土した遺構・遺跡や、周辺地形について検討しつつ、動物考古学や文献史学の成果と統合することで、日朝両地域における馬匹生産体制の復元と比較をおこなう。 本年度はパソコンやカメラなど調査研究に必要な機材を整備するとともに、大阪府古市・百舌鳥古墳群出土馬具に重点をおいて調査を進めた。古市・百舌鳥古墳群が築造された古墳時代中期は日本列島に馬や馬具がもたらされ、定着した時代であり、日本列島最大規模の前方後円墳を含む両古墳群の築造集団は、河内平野はもちろん日本列島中央部におけるそれらの受容や普及に決定的な役割を果たしたことが予想される。本年度は両古墳群だけでなく、蔀屋北遺跡や百舌鳥陵南遺跡など周辺で馬匹を生産ないし飼養していた遺跡から出土した馬具について悉皆調査をおこない、ウマ遺存体の出土状況や周辺地形なども含めて検討を進めた。その成果の一部については、堺市が主催するシンポジウムにおいて発表した。 このほかにもこれまで継続して調査を進めてきたモンゴルの匈奴墓出土馬具や日本列島出土高句麗系初期馬具についての研究成果をまとめたほか、東アジアにおける騎馬文化の東伝において加耶が果たした意義について韓国語で公表するなど、本研究の基礎となる研究成果の公表に努めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
古市・百舌鳥古墳群出土馬具や周辺の集落遺跡から出土している馬具については本研究開始以前に調査したものも含めると、公表されているものについてはほとんど調査を行うことができた。また来年度以降の韓国での調査について、複数の所蔵機関から承諾を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も日韓両国において地域を絞って馬具の調査を進め、ウマ遺存体の出土状況や周辺地形などの検討も含め、各地における馬匹生産体制の復元を行う。また昨年度から調査を進めている河内平野については、とりわけ馬匹生産の受容過程について朝鮮半島を視野に入れた検討を具体的に進める。 今年度は本研究課題に関わる韓国人研究者を含めた研究会の開催を予定している。また研究成果を専門的な論文だけでなく、講演や一般書籍といった平易な形で広く一般に還元することに努める。
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Causes of Carryover |
年度の後半に計画していた海外調査の一つが先方の事情により延期となったため、そのために確保していた予算を執行できなかった。
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Research Products
(10 results)