2022 Fiscal Year Research-status Report
藤原宮造営に伴う造瓦の新技術とその導入経路に関する総合的研究
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18K01084
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Research Institution | Kyoto National Museum |
Principal Investigator |
石田 由紀子 独立行政法人国立文化財機構京都国立博物館, 学芸部考古室, 室長 (40450936)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 瓦窯 / 瓦生産体制 / 鴟尾 / 3次元計測 / 都城 / 木笵 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和4年度は、当初4年計画だった本研究を1年延長したため5年目となる。今年度は研究代表者が奈良文化財研究所から同じ(独)国立文化財機構の組織である京都国立博物館に異動となった。本研究は奈文研が所蔵している瓦資料や発掘調査報告書などの文献資料を基盤としているため、これまでの研究方針を大きく変更する必要が生じた。特に奈文研が所蔵する日高山瓦窯出土資料の整理に関しては、ほとんど進めることができなかった。また本務の業務内容も大きく変わったため、これに対応する必要があり、科研に時間を割くことが難しかった。 このように研究環境に大きな変化が生じたため、順調とは言い難い状況である。それでも可能な限り研究を進め、以下のような成果をあげることができた。 ①これまでの研究成果を一般に向けて広く公開するよう努めた。まず、昨年度の研究成果である「変形忍冬唐草文軒平瓦6647Cの再検討」について、飛鳥資料館の令和4年度冬季企画展「飛鳥の考古学2022」で関連展示がおこなわれた。それに合わせて展示図録で一般向けに分かりやすく解説をおこなった。加えて博物館に異動となり、平安京の瓦窯出土の鴟尾の調査をおこなう機会を得た。その成果を京博の市民向け講座である土曜講座のなかで報告した。 ②京博に寄託された上庄田瓦窯と栗栖野瓦窯出土の鴟尾について、SfM-VMSを用いた3次元計測をおこなった。両者はともに平安京の瓦窯である。平安京の瓦窯は、当初の研究計画では対象としていなかったが、都城の瓦生産を通史的に理解するうえでも重要である。また、3次元計測手法を導入できたことも今後瓦の研究を進めるうえでも有効だと考えている。なお成果は、R5年度に京博の学術誌『学叢』で報告する。 ③去年度発表した「変形忍冬唐草文軒平瓦6647Cの再検討」をうけて、瓦当面に表出された木笵の木目痕に注目した報告をおこなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究代表者が奈文研から京博へと異動となり、本研究を進めるにあたって基盤となる奈文研所蔵の瓦資料を身近に取り扱うことができなくなった。日高山瓦窯出土資料に関しては、昨年度までで実測、拓本、トレース等の資料化はほぼ完了しているものの、報告書にむけて最終的な検討・考察をおこなう必要がある。これについては、ほとんど進めることができなかった。また、報告書をもとにした集成作業等も奈文研の書庫を利用することを前提したものであったため、作業を進めることが困難だった。 ただし、これまでの成果を展示図録や市民講座などを通して一般向けに報告をおこなうことができた。加えて平安京の瓦窯から出土した鴟尾に関して3次元計測をおこなうなど、当初は予定していなかった研究を新たに進めることができた。このことに関しては、今後の研究を発展させるという観点からも重要と考えている。 以上の観点を総合的に判断して、やや遅れているとした。
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Strategy for Future Research Activity |
R5年度は本研究の最終年度であり、これまでの研究の成果をまとめるべく以下のようにな計画で研究を進めていく。 ①日高山瓦窯出土の瓦資料については、資料化はほとんど終わっているため、今年度は奈文研所蔵の資料を中心に関連資料の追加調査をおこなう。また令和5年度に、奈文研都城発掘調査部飛鳥・藤原地区において日高山瓦窯の発掘調査が実施される。これにより、瓦窯の配置や立地等、造瓦所としての日高山瓦窯を考えるうえでも、より精緻な情報が得られると期待できる。可能であれば本研究にもその成果を反映させたいと考えている。 ②藤原宮造瓦における新技術の導入経路に関しては、重要なカギである粘土紐技法の瓦の集成を、奈文研が所蔵する報告書をもとに継続しておこなう。発掘調査報告書データベースである全国遺跡報告書総覧を活用しつつ、今年度は併せて5日程度奈文研の書庫にて作業を進める。 ③中国や韓国での瓦の調査に関しては、コロナ禍もあって令和2~4年度にかけては実施することはできなかった。今年度は韓国の扶余や慶州で出土している粘土紐技法の瓦を中心に調査をおこないたいと考えている。
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Causes of Carryover |
職場の異動や新型コロナウィルス感染防止の観点から、当初予定していた中国や韓国の調査をおこなうことができなかった。必要な調査に関しては、今年度おこなう予定である。
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Research Products
(4 results)