2018 Fiscal Year Research-status Report
非破壊化学分析による石器石材の研究:ネフライト製石器遺物の再認識とその源岩推定
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18K01088
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
飯塚 義之 金沢大学, 国際文化資源学研究センター, 客員研究員 (90804203)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 縄文時代 / 石器 / ネフライト / 非破壊化学分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年9月に富山市教育委員会所管の富山市考古資料館を訪れ、富山県各地から収集された縄文時代の石器石材のポータブル蛍光X線分析装置(pXRF)による化学分析を行った。同館からは石材資料を30点借用し、台北にてSEM-EDSを用いた化学分析を行った。借用資料は2019年3月に返却した。11月には、グアテマラ、デルバレ大学を訪れ、同大学の考古学教室で、石材分析のワークショップセミナーを開催、同国マヤ文明遺跡から出土した石製遺物、特にヒスイのpXRFによる化学分析、マヤ遺跡の巡検を行った。12月には学習院大学で行われた東洋文化講座にて講演を行った。同月、名古屋市博物館を訪問、同館収蔵の石器資料を検分した。同館には2019年2月初旬に採訪し、石器資料を借用していた。2月中旬には、東北大学考古学教室にて石材分析のワークショップセミナーを開催、その後、同大学収蔵の石器遺物のpXRFによる化学分析を行った。同月には、青森県三内丸山遺跡資料館、青森県立郷土館、八戸市是川縄文館を訪問し、縄文遺跡から出土した石器石材のpXRFによる化学分析を行った。 日本各地の化学分析を通して、北陸地方を産地とするネフライトや角閃石岩で製作された磨製石斧が、縄文時代の前期から中期にかけて東海地方や東北地方に広く分布している事がわかった。ネフライト遺物はこれまでの報告では蛇紋岩という記載をされている事が多く、岩石学的な正しい記述に基づく再調査の必要性があることがわかった。またネフライトの広がりは、原産地を同じくするヒスイに匹敵するものであって、かつ主として石斧などの道具の石材として使われたネフライトの分布は、装飾品として用いられていたヒスイの分布に先行するものであるらしいということがわかってきた。これらは新しい知見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
pXRFを用いた石器石材分析から縄文時代に利用された石材とその分布を主たるテーマとする4年計画の初年度である2019年度は、北陸地方、富山県内から採取された縄文石器の重点的な調査を進めた。pXRFによる現地分析の結果から、30資料を借用し、SEM-EDSによる分析を行うことができた。年度後半には、東海地方の一部(愛知県)と東北地方(青森、秋田、宮城、山形)での調査を行う事が出来、北陸地方と同様にネフライト製の石器の分布が確認できた。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の石器石材分析の結果から、縄文時代の石器石材にはネフライトが用いられていることが確かめられた。またこれらの原石を考えるとき、石材の化学組成は北信越地方に産出するネフライトと対比できる。第2年度は、予察調査でも分布が確認された東北地方、特に青森県、宮城県を中心とした石器製材の調査を進める。すでに両県とはpXRF分析計画の承諾を得、また一部石器の借用の承諾も得ている。一方で、東北地方では、アオトラと呼ばれる北海道産の緑色凝灰岩が石器として広く用いられていることが知られておりそれらの分析の機会も設けたいと考えている。さらに第3年度への足がかりとして、信越地方への予察調査の機会を得たいと考えている。日本の先史時代における石器の石材は、ヒスイと黒曜石の二つに限られていたが、ネフライト製やアオトラ製の石器の分布を検証することで先史時代のモノの動きを知る新たな指標を得ることが可能であると考えている。
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Research Products
(5 results)