2020 Fiscal Year Annual Research Report
非破壊化学分析による石器石材の研究:ネフライト製石器遺物の再認識とその源岩推定
Project/Area Number |
18K01088
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
飯塚 義之 金沢大学, 人間社会研究域, 客員研究員 (90804203)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 石器石材 / 縄文時代 / 新石器時代 / 非破壊化学分析 / ネフライト / ヒスイ |
Outline of Annual Research Achievements |
石製遺物は腐食、変質することなく、その形や化学組成も当時のまま保存されている。しかし肉眼観察によって石器石材(岩石)を同定することは大変に難しく、情報共有や比較のための障害であった。本研究では可搬型で完全非破壊分析が可能なポータブル蛍光X線分析装置(p-XRF)を考古の現場に持ち込み、石器石材の判別に取り組んだ。p-XRF法は定性分析に向いているが、「定量分析の確からしさ」についての検討例はなかった。そこで実験室において、ED-XRF、EPMA、SEM-EDSを使用し、p-XRFとの比較分析を試み、それぞれ分析値は天然のもつバラツキの範囲内で一致することを確認した。本手法は石材同定と共に岩石学的な議論にも有用である。 北陸地方の縄文時代の石器の多くは、これまで蛇紋岩製とされていた。しかし本研究で石斧のほとんどにネフライト、あるいは同質の普通角閃石岩が用いられている事が明らかとなった。ネフライト製石器は中部地方(富山、福井、石川、岐阜、愛知)に限らず、関東地方(群馬、栃木、千葉)、西は岡山県地方、北は東北地方(青森、岩手、宮城、山形、福島)でも同定された。また原岩の化学組成との対比から、一部は「長野県北部から新潟県西部の白馬―糸魚川地方(青海―蓮華帯)」を起源とすること、またこれまで存在が確認されていなかった「葉蝋石」が装身具の石材として用いられていたことがわかった。 東南アジアの新石器文化(ミャンマー、タイ南部、ベトナム)や中米マヤ文明(グアテマラ)での石材分析も行い、それぞれJADE(ネフライトやヒスイ岩)以外にも多様な石材が用いられていることを明らかにした。 完全非破壊化学分析法を石材同定に応用することで、石器石材の多様性や地域的な特徴を見出し、一部は原岩採取地の推定にもつなげた。本研究は、2021年度からも継続研究として遂行される。
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Research Products
(11 results)