2018 Fiscal Year Research-status Report
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18K01095
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Research Institution | Tohoku History Museum |
Principal Investigator |
森谷 朱 東北歴史博物館, 学芸部, 学芸員・技師 (30808514)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
及川 規 東北歴史博物館, 学芸部, 研究員 (00754186)
芳賀 文絵 東北歴史博物館, 学芸部, 学芸員・技師 (80754530)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 被災物 / 震災遺構 / 東日本大震災 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度前半は、研究の準備期間と位置付け、ヒアリング調査の準備として博物館等施設及び被災地の災害伝承施設との連絡調整、ヒアリング項目や内容等の整理作業を行った。また、調査・実験に使用する資材や機器の購入、動作確認、条件設定等を実施した。 2018年度後半は、対象施設とした博物館、美術館、災害伝承施設、震災遺構、大学の各施設にてヒアリング調査を実施し、目視による被災物の劣化状態の観察も行った。 ヒアリング調査及び被災物の目視観察により、東日本大震災の被災物について、収集・保管・展示の現状が明らかとなった。収集されている被災物の傾向としては、複合素材からなるものが多く、その主要な材質としてはプラスチック、金属、繊維であり、汚損については津波による付着物が多い傾向にあることが確認された。特に、津波による付着物は土や植物等であり、付着形態も多様で、かつ、展示・保管環境も異なることから、それらに適した固着処置の必要性が示唆された。また、ほとんど被災していないホワイトボードや黒板、そこに残る文字も、震災直後の状況を物語る資料として保存の対象となっており、これらについても保存処置の必要性が示唆された。被災物の保管・展示上の課題としては、臭いを発している被災物には、それ自体の劣化が進行し、周囲へも影響を及ぼす可能性があること、また、光により劣化している可能性があることが懸念される。 2018年度は、本研究の目的である、被災物が被災痕跡を留めた状態で劣化せず、かつ収蔵・展示環境に影響を与えない安定的な状態で保存活用されていくための方法解明に向け、その基礎データの収集及び被災痕跡の具体的な事例収集を通じ、課題の整理・抽出を行うことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題の進捗状況は、やや遅れている。これは、当初、2018年度の後半に計画していた、試料を高温高湿環境及び長時間の光照射に曝す等、試料を強制的に劣化させる劣化促進実験について、現段階では予備実験や環境設定条件の検討段階にあり、本格的な実験の実施に至っていないためである。2019年度は早急に実験を進め、さらに並行して被災物のモニタリングも行い、データを収集していく。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、2018年度に実施した調査で得られたデータを基礎として、被災物の材質や劣化要因を限定し、より詳細な観察と調査分析を重ね、被災物の保存活用方法の解明を進めていきたいと考えている。具体的には、当初計画していた試料の劣化促進実験を実施し、劣化促進後の試料の目視観察、色差、形状等の測定、異臭・揮発物の分析により劣化状態を評価し被災物の劣化機構を明らかにしていく。また、2019年度は劣化促進実験と並行して実際の被災物と周辺環境のモニタリングを行い、被災物の劣化機構及び保存活用方法解明のためのデータを収集していく予定である。さらに、それらのデータをもとに被災物の付着物に含まれる劣化因子の除去と被災痕跡の固定化について検討していく。
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Causes of Carryover |
次年度使用額が生じたのは、2018年度に計画していた被災物の劣化促進実験が、予備実験のみで本格的な実施に至らず、必要な資材等の購入を行わなかったためである。今後は現地でのモニタリングを行うため、その際の旅費及び当初の予定通り劣化促進実験実施時の資材費要として2018年度の余剰分を充当したいと考えている。
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Research Products
(1 results)