2020 Fiscal Year Annual Research Report
Research on application of ATP surface test in museum IPM
Project/Area Number |
18K01097
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Research Institution | Independent Administrative Institution National Institutes for Cultural Heritage Tokyo National Research Institute for Cultural Properties |
Principal Investigator |
間渕 創 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, 保存科学研究センター, 保存科学研究センター付 (80601195)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | ATP拭き取り検査 / 博物館IPM / カビ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では、今後博物館IPMにおけるATP拭き取り検査における合理的なATP発光量の基準を設定していくための基礎的な知見として、保存環境や資料表面で許容されうる、カビ集落が死滅または活性が低いと判断できる単位面積当たりのATP発光量の範囲を検討した。これまでに実際の博物館の収蔵庫で保管されている資料や、博物館外部からの借用資料のカビ跡等、災害時の水損資料について採集し単離・培養を行い、rRNAを用いた遺伝子解析による既近縁種の推定を行った。 本年度は、これまでに博物館等で採取した50菌株を供試菌とし、集落のATP 発光量の経時的な変化を測定することで増殖相の変遷を評価した。供試菌によって増殖曲線の形状に違いが見られたが、ATP 発光量が減少に転じる死滅期については見て取ることができ、培養初期から対数期、静止期までの単位面積当たりのATP 発光量は2.0×10^4~1.0×10^7 RLU/㎝2の範囲、死滅期は1.6×10^2~9.9×10^6 RLU/㎝2の範囲であった。また使用するATP拭き取り検査機器についても比較を行い、機種・スワブ感度により単位当たりのATP発光量に数倍程度の差がみられた。 本研究で得られた知見から、実際の博物館等の収蔵庫、展示室や資料表面でカビ様の汚損等が見られ、その汚損についてATP 拭き取り検査を行った場合、大まかな目安として10^4 RLU/㎝2 以上であれば,活性が高く今後被害が拡大・拡散する可能性があり、10^3 RLU/㎝2 のオーダーであれば活性が低い、10^2 RLU/㎝2 以下で死滅または,汚損はカビによるものではない可能性が高いと判断できることになる。このATP発光量の目安は、博物館IPMにおいてATP拭き取り検査に基づいた適切なカビへの対処に資するものと考えられる。
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Research Products
(2 results)