2018 Fiscal Year Research-status Report
南九州・南西諸島におけるテフラ編年に基づく過去3万年間の古環境変化の高精度編年
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18K01122
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
森脇 広 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 名誉教授 (70200459)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 毅彦 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 教授 (60240941)
永迫 俊郎 鹿児島大学, 法文教育学域教育学系, 准教授 (70709518)
吉田 明弘 鹿児島大学, 法文教育学域法文学系, 准教授 (80645458)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 南九州 / 高精度編年 / テフラ / 低地 / 砂丘 / シラス台地 / 完新世 / 後期更新世 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は,大隅半島太平洋岸の肝属平野での2本のボーリング掘削を中心とした調査と,南西諸島喜界島のテフラと地形の調査を行った. 肝属平野は現海岸沿いに砂州,背後に低湿地が存在し,植生や海岸環境の変化を解析するのに好条件をもつこが予想されていた.北部の持留川低地は陸上の探査からも軟弱な泥質堆積物があることが確実視された.ここの内陸側と海岸側の2ヶ所に於いて,機械ボーリング掘削を行った.内陸側は深度15m,海岸側は30mのボーリングである.結果は,地表から10m付近まで厚い泥炭質堆積物が認められ,この下位からは青灰色の海成堆積物とみられる青灰色のシルト層,さらに基盤である入戸火砕流堆積物が見いだされた.泥炭質堆積物と青灰色シルト層の境界は海岸側に砂州が形成された時期にあたると考えられる.砂州の形成の調査からは,池田テフラ(6400年前)の時期にその形成が始まったことがわかり,この時期と泥炭質堆積物と青灰色シルト層の境界の時期とはおそらく一致するものと考えられる. 南西諸島の喜界島は,12.5万年前のサンゴ礁段丘面が最高200mの高さにあり,日本でも最も隆起量が大きい場所として知られる.このため,現在より海面がかなり低い時代(ステージ3)のサンゴ礁段丘が陸上に現れている.この段丘面上には古砂丘が形成されている.これらの地形の編年資料を得るためにテフラ(火山灰)の調査を行った.その結果,本地域にはこれまで知られていない細粒火山灰を3枚見いだした.その鉱物組成や光学的性質は特異で,識別可能な性質を持つ. シラス台地の侵食過程を知るために,台地を縁取る河岸段丘とテフラの関係を調査した.肝属平野の笠野原周辺の段丘面では,最低位の段丘面にまで,桜島テフラの最も古い高峠6テフラが堆積しており,シラス堆積直後に急速に下刻と側刻が繰り返されて下刻がおこったことが明らかとなった.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度行った大隅半島の持留川低地での機械ボーリング掘削では2本のコアを採取し,晩氷期から後氷期の古環境変化の資料を得ることができた.このコアでは,厚い泥炭とその下位の青灰色泥質海成堆積物,さらに基盤の入戸火砕流堆積物が認められ,旧河谷に海面上昇に伴い旧河谷に海進が及び,そして水没内湾化し,次いでラグーン化し,湿性地となるような海岸環境の変化が明らかとなった.さらに,テフラの解析から,低地での古環境変化と,これと深く関わる海岸側の砂州の形成との関係も明らかとなった. 南西諸島のテフラと砂丘形成については,喜界島において未知のテフラ3枚を見いだし,既知の広域テフラAT, Ahに加えて,南西諸島のテフラ編年を進展させることができた.さらに,今回の調査で喜界島の海岸段丘・砂丘の堆積物を覆ったり,挟まれたりする土壌中からもこれらのテフラを見いだし,特にこれまで不確かであった古砂丘形成期と形成環境の解明に見通しを立てることができた. シラス台地の侵食過程については,二次シラス段丘の形成時期が一つの鍵となっている.これに,桜島のテフラ群による編年は有効で,上下多数ある二次シラス段丘面のうち最下位の面から,最も古い桜島テフラを見いだし,シラス台地原面形成後,直ぐに現在の低地付近まで侵食が及び,現在見られる二次シラス段丘面群の景観の基本はこの時に形成されていたことが明らかとなった. 以上のように,本研究の課題に対していくつかの古環境要素の編年に一定の結果が得られ,自然環境諸要素の編年の統合化は順調に進行していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
1.今年度の調査で,特に研究推進の方向が展望できたのは,喜界島で新しく見いだされた3枚のテフラである.これまで知られている鬼界アカホヤテフラ,姶良Tnテフラに加えて,新しい編年指標を得ることになり,南西諸島の古環境・文化の高精度編年を進展させるのに一つの鍵となる.今後は,喜界島での確実な層序の確立を目指す.それらの確実な層位はまだ確定していないが,次年度の調査によって確定したい.これらのテフラと砂丘の関係は今回の研究の一つの目的である.今後の分析によって明らかにする.さらにこれらのテフラと,砂丘・段丘地形との層位関係を明らかにする.その分布の広がりと給源火山の特定を図る.その給源火山の可能性の高いトカラ列島の諸火山のテフラと比較同定する.さらに,周辺の島々,周辺海域の海底テフラ,とりわけこれまでに採取しているトカラ海峡,種子島沖の海底コアのテフラとの対比を図り,テフラ層序と分布編年を充実し,周辺地域の古環境・考古文化との高精度編年を目指す. 2.南西諸島,南九州の沿岸地帯には多くの完新世海岸砂丘が分布する.これらの砂丘には固定期を示す腐植層によって,何回かの活動期が存在したことが知られている.こうした環境変化による砂丘形成期の調査のためのテフラ調査と年代試料収集調査を行う. 3.低地の環境変化を知るための,堆積物の室内分析を行う. 4.シラス台地を縁取る河岸段丘形成について,今後は基盤地形との関係や山地から海岸までの形成の違い,河川規模の違いなどによって南九州の各地でどのような差異と類似性があるかを検討する. 以上によって,多要素の環境要素の変化の対比・統合化の充実していく.
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Causes of Carryover |
ボーリングコアや野外調査,さらに堆積物処理に関わる費用を計画していたが,今年度は肉眼観察を主体としことや,年度半ばに予定した成果発表に至るほど調査結果が十分整理されていなかったため,その使用額が当初の予定より低く抑えられ,次年度に繰り越すこととなった.今年度の調査で,本研究課題の一つであるテフラと地形形成について,特に南西諸島地域において早急に解明すべき調査課題が生じたので,次年度は,主に南西諸島の調査旅費,現地調査で採取される試料のC-14年代測定費に使用する計画である.
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Research Products
(5 results)
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[Journal Article] Recent ostracod distribution in western Kyushu, Japan, related to the migration of Chinese continental faunal elements.2019
Author(s)
Gengo Tanaka, Yasuhisa Henmi, Tatsuya Masuda, Hiroshi Moriwaki, Toshifumi Komatsu, Baochun Zhou, Takumi Maekawa, Sota Niiyama, Phong D. Nguyen, Hung D. Doan, Noriyuki Ikeya
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Journal Title
Marine Micropaleontology
Volume: 146
Pages: 1-38
Peer Reviewed / Int'l Joint Research
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