2019 Fiscal Year Research-status Report
Geographical study on Prompt land use changes on riverside land from the viewpoint of dynamics of physical and social environment along the middle Arakawa river, Saitama, Japan
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18K01128
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Research Institution | Rissho University |
Principal Investigator |
島津 弘 立正大学, 地球環境科学部, 教授 (90251909)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
鈴木 重雄 駒澤大学, 文学部, 准教授 (40581476)
宇津川 喬子 立正大学, 地球環境科学部, 助教 (20822711)
本岡 拓哉 立正大学, 地球環境科学部, 特任講師 (60514867) [Withdrawn]
伊藤 徹哉 立正大学, 地球環境科学部, 教授 (20408991)
横山 貴史 立正大学, 地球環境科学部, 助教 (70710151)
原 将也 立正大学, 地球環境科学部, 助教 (00823147)
原 美登里 立正大学, 地球環境科学部, 准教授 (00386517)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 堤外地 / 微地形 / 土地利用 / 土地所有 / 農業 / 荒川中流 / 名取川下流 / 令和元年台風19号 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は主として名取川で調査を行った.共同調査は10月,12月,2月に1泊2日または2泊3日で実施した.10月は堤外地の堆積構造を知るための露頭調査および記載と仙台市立博物館における調査範囲周辺の江戸時代に作成された絵図の複写を行った.12月は国土交通省仙台河川国道事務所,JA名取岩沼,名取市農業委員会事務局における聞き取り,氾濫堆積物の露頭記載,令和元年台風19号の被害概要の把握を行った.2月には堤外地の掘削による堆積物調査,台風19号による堆積物調査,植生調査,土地利用に関する聞き取り調査,台風時の出水に関する聞き取り調査,台風後の耕作状況の調査を行った. その結果,次のことが明らかになった.堤外地の高水敷は洪水・堆積の繰り返しで現河床からの高度が上昇していった.1952(昭和27)年以前には現在堤外の高水敷の部分にも集落が存在し,その当時の屋敷林やスギ苗育苗地跡の植生が現在でも残存している.一方で,堤防建設後に堤外地に定着したと考えられるオニグルミやハリエンジュ等の河畔植生,ネザサが見られた.広く堤外地では農業が行われており,秋~冬にはダイコン,ニンジン等根菜類や特産のタマネギ,曲がりネギ,ユキナ,ハクサイ等葉菜類,ムギが栽培されていた.一部には水田も存在している.出荷する野菜が広く栽培されている区画もあるが,細かく区割りされて家庭菜園となっているところも見られる.土地所有は複雑で,地主から土地を借りて耕作しているところが多かったが,土地所有者が不明となっているところも見みれた.台風19号の洪水では高水敷も大部分が水没し,畑部分でも2m以上の深さで浸水した.高水敷の中には段丘状の段差が見られるが,低位面には礫を含む新たな土砂堆積が見られたものの,畑の大半が位置する高位面の堆積はわずかであった.洪水後,流下してきたゴミや植物片は片付けられ,農業が再開されていた.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度の調査では名取川について微地形の概要,堆積物の特徴,植生の特徴,かつての集落跡の現況,農業の状況,土地利用の状況,土地所有の概要が明らかにできた.このことにより,堤外地の利用についての人文・社会的データが蓄積できるとともに,植生,地形,堆積物といった自然環境のデータも取得できた. 洪水被害を受けやすい堤外地の状況を明らかにするにあたって,洪水リスクとの関係を評価するためのより具体的なデータが必要である.当初は予想していなかった大規模な洪水が令和元年台風19号による大雨によって発生し,より詳細なデータが取得できた.増水の状況とその影響については,洪水堆積物の調査,現況調査,聞き取り調査を実施することにより,今回の台風の影響を明らかにできただけでなく,洪水リスクとそれへの対応について考察するためのより具体的なデータを取得することができた. 埼玉県荒川でも令和元年台風19号による洪水が発生し,堤外地の高水敷はある程度の深さで水没し,公園施設,スポーツ施設などがある程度被害を受けたが,農地における被害はあまり大きくなかったことが概要調査から明らかになっている. これらの調査に平成30年度調査結果も加え,名取川と荒川との比較を行うための基礎的なデータはそろったと判断される.
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Strategy for Future Research Activity |
今年度は今までの調査結果に補足調査を加えて,自然-社会の動態をふまえた上での河川堤外地空間の利用についてとりまとめる. 名取川における調査結果をもとに,堤外地の土地利用の特徴,土地所有の推移,植生とかつての土地利用,地形・堆積物と土地条件,洪水リスクとそれへの対応について,それぞれの関係性に基づいて,考察を進める.一方で,まだ十分に明らかにできていない土地所有関係,土地利用変化の歴史や微地形と令和元年台風19号の洪水による堆積や侵食の関係,堆積物の解析に基づく洪水史の復原については追加調査を行う. 一方で,埼玉県荒川では名取川において行った調査手法を応用して調査を行い,荒川特有の大規模集落移転,堤外地の土地利用現況,集落移転後の土地利用変化,堤外地化以前の残存する地形と堆積の歴史,を明らかにし,河川規模,治水対策,大都市との関係性などの視点で,名取川との比較を行う.荒川流域の諸河川では,破堤・越水による堤内への氾濫が起こったが,本川では高水敷が少し水没する程度であった.概要調査で一部に被害があったことがわかったが,まだ詳細は明らかにできていない.集落の一部も水没したと判断される. 当初は4月~5月にに調査を行う予定であったが,新型コロナウィルス対応のため調査ができなくなった状態である.今後の状況を見守りながら,できるだけ現地でのデータ取得を目指すが,それができないときには今までのデータやGISデータ,空中写真データを活用しながら,取りまとめを行う予定である.
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Causes of Carryover |
当初予定していた現地調査の期間短縮および調査参加予定者が参加できなかったことによる旅費および現地調査の新型コロナウィルスの影響による期間短縮や十分な現地調査補助者の雇用ができず謝金が支出できなかったことが主な理由である.次年度においては,新型コロナウィルスの状況を判断しながら現地調査を遂行するとともに,現地調査補助者を雇用し,研究を遂行する.
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Research Products
(2 results)