2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K01135
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
武者 忠彦 信州大学, 学術研究院社会科学系, 准教授 (70432177)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 都市再生 / リノベーション / 中心市街地 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は長野県長野市および松本市の中心市街地を事例に,リノベーション建築という媒体を通じて創造的人材が特定の空間的文脈のある場所に惹きつけられ,地域社会に根付いていくプロセスを実証的に明らかにすることを目的としている。両都市とも「創造都市化」および「都市の文脈化」のプロセスによって中心市街地再生の動きが生じていると考えられるが,それが地域固有の条件下で生じたのか,それとも普遍的なプロセスとして一般化可能なのか,本研究では1)空間資源の可視化,2)創造的人材の流入,3)空間的文脈の継承,4)地域コミュニティの再構築という4つのテーマを設定し,2018年度はこのうち,1)と2)のテーマについて分析を進めた。 まず1)について,国勢調査小地域統計や自治体の家屋台帳などを用いて,中心市街地の人口・事業所の減少が大きいエリアや地価が安い路地裏のエリアにおいて,リノベーションに適する建築物が潜在的に多いことを示した。その上で,関係者へのヒアリング調査をもとに,こうした物件が不動産業者や建築士の連携によって可視化されることを明らかにした。 2)については,予備調査で予見された創造的人材(定義はフロリダらの「創造階級」に準ずる)が,なぜリノベーション建築を選好し,定着するに至ったのか,対面式アンケート調査から明らかにした。具体的には,職業や居住の経歴から創造的人材を把握した上で,改修の費用や方法に関する情報を収集し,家計・経営上のメリットを分析したほか,創造階級が嗜好するとされるカフェや文化施設への近接性,職住近接や対面接触に関する利便性などを検討した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度に予定していた国勢調査小地域統計を用いた中心市街地の人口動態の調査,商業統計を用いた小売販売額の調査,家屋台帳を用いた建築物の分布状況調査など,中心市街地空洞化の全体像を捉えるための分析はおおむね完了した。また,リノベーション物件の入居者64名に対する対面式アンケート調査も実施し,基本的な属性や経歴,経営状況や生活空間などの情報を得て,来年度以降の分析に向けてデータベースを整備することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
来年度は,本研究の主要な4つのテーマのうち,3)空間的文脈の継承,4)地域コミュニティの再構築の2つについて,主に研究を進める。具体的には,3)について,いくつかのリノベーション事例から入居者のコンセプト,設計者のアイデアや技術などを詳細に聞き取る調査を実施する。4)については,空き家探しから契約,施工,その後の居住・経営に至るまで,リノベーション建築の入居者がどの段階で誰とつながり,どのような付き合いをしているのか,アンケート調査によって明らかにする。
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Causes of Carryover |
当初計画していたよりデータ分析等の調査のウエイトが大きくなり,予定していた現地調査での謝金等の費用が圧縮されたため。 次年度使用額は2019年度請求分と合わせ,当該年度に実施できなかった現地調査での調査日数を増やすため,主に謝金に充当する。また,一部はGISなどのデータ購入にも利用する。
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