2021 Fiscal Year Research-status Report
古地図に描かれる山西辺境地域ならびに首都北京の防衛空間の構造分析
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18K01137
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉浦 和子 京都大学, 文学研究科, 教授 (50155115)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 防衛 / 地図 / 清 / 長城 / 八旗 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度の研究で、三軍(満洲・蒙古・漢軍)の八旗の関連施設の所在を詳細に示す「精絵八旗布防系北京図」群と同系統の性質を持つ大判・大縮尺の北京図が清代以降、民国期に入っても作成されたことを突きとめたが、2021年度の調査で、同系統の地図の範域の拡大と制作時期の延長を確認することができた。北平特別市公安局製『北平特別市城郊外地圖』(1930)(関西大学図書館所蔵)は、内城・外城の範囲を超え近郊部分も含めた領域に都市の防備に関わる諸施設の配置を示す地図であり、同系統の地図の成立背景を検討する手がかりとなる。また、現在所在が確認されている「精絵八旗布防」系北京図の間で、八旗関連施設の数と分布に差異があることは、図示された施設の種類の違いもしくは配置の変化を示唆しており、この種の地図の実用性・機能性が明確である。 明末の北方辺墻の階層性と防衛拠点ネットワークの構成を、明末から清初への辺境情勢の変化に照らしつつ、辺墻を分割管理する九辺鎮のなかでの山西鎮の位置づけおよび、外三関(寧武関、偏頭関、雁門関)と北京により近い内三関(居庸関、紫荊関、到馬関)との関係性、外三関の相互関係から重層的な分析を進め、陣(鎮、堡など)の改廃に伴う構造的な変化を確認した。さらに、外邦図やUSGS作製の地図から地形の起伏や水系と長城の配置および布陣ネットワークと関係を地図化する作業を行った。 関連する地図研究として、近世の内陸アジアの地誌や風俗資料を日本にもたらしたレザノフ来航に関わる世界図を分析し、その原図がボアソ図であることを突き止めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
ベルリン国立図書館ならびにアメリカ合衆国議会図書館での資料調査を計画していたが、COVID-19の感染拡大のため、渡航を見合わせた状態が続いているほか、国内機関での資料調査も制約を受けている。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、「精絵八旗布防系北京図」の分析を進める。並行して、山西辺垣垣図群のネットワーク分析ならびに被覆領域分析を行い、首都とフロンティアの防衛図の特質を明確にする。19世紀前半から中期にかけての北京図の伝播と国境地帯を含む辺境の交易経路の関わりに関する研究のとりまとめを行う。
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Causes of Carryover |
COVID-19の感染拡大により、ベルリン国立図書館、アメリカ合衆国議会図書館をはじめ、海外はもとより、国内調査ですら、閲覧が制限され、調査旅費の使用に大きな制約があったため。今年度は、国内外の機関での調査を行うとともに、画像データを含めた地図資料の収集にあたり、北京図と長城図の分析および研究のとりまとめを進める計画である。
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