2022 Fiscal Year Research-status Report
古地図に描かれる山西辺境地域ならびに首都北京の防衛空間の構造分析
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18K01137
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉浦 和子 京都大学, 文学研究科, 名誉教授 (50155115)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 地図 / 清 / 八旗 / 防衛 / 長城 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)清代に作成された北京図の比較分析: 2021年度の調査で明らかにした「精絵八旗布防系北京図」系統の地図の範域の拡大と制作時期の延長を踏まえて、この種の北京図の系譜の全体像の解明に取り組んだ。八旗の乗馬拠点、派出所的な施設の位置、胡同入口の柵欄や所属する八旗の詰所などの防衛関連施設との関連や防衛機能の時代による変化との関係だけでなく、王府・衙署・倉・寺廟・市など、主要な都市施設が担う首都の政治経済機能、胡同や宅地の区画、井戸などの都市居住者の生活基盤、同業者や同郷者のための会館、多様な集団(身分、職業、満州・漢族・蒙古および少数民族など)との関連を多面的に検討した。 (2)古地図に描かれる辺境地域の防衛空間の構造の分析:明末清初に作成された「山西辺垣図」群に描かれる軍事拠点である陣(鎮、堡など)を拠点とする空間構成を分析した。各陣は、四方(原則として東西南北)に指示する他陣を有し、これらを包摂する空間をその陣の指示領域とみなす。他陣を指す距離には長短があるため、指示する陣を中核として指示される陣を覆う指示領域には広狭の違いがある。北方の長城付近の防衛前線地帯には多数の陣が密に分布し、各陣の比較的狭い指示領域が隙間なく並ぶ。指示する陣が長城外にある場合には、指示領域が長城の内外を覆う。前線地帯から、山西省城までの間には、山西鎮の拠点とされる陣群(雁門関など)、それらと省城の間に介在する陣群の二つのグループがあることが確認され、総じて後者のほうが指示領域は広い。後者の陣群では忻州のみが省城を指示する領域を有する。長城に沿った前線地帯から省城までの領域は、面積と密度の異なる指示領域を持つ陣群により、段階的かつ重層的な防衛空間が構成されている。こうした防衛空間の戦略的構成が山西鎮特有のものか、明末の九辺鎮に共通するものか、さらに分析する必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
山西長城付近のネットワーク分析と北京の都市内諸施設の空間分布を進める際、それぞれ数種の地図からのデータ抽出と文献資料との照合および地図分析に予想以上の作業時間を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き、「精絵八旗布防系北京図」と「山西辺垣垣図群」の地図分析を並行して進め、首都とフロンティアの防衛空間の構造的特質を解明し、研究のとりまとめを行う
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Causes of Carryover |
COVID-19の感染拡大による渡航制限の名残に加え、ウクライナ危機による渡航費の高騰なの影響から、海外での資料収集調査に対する制約が十分解消されなかったため。今年度は、国内外の機関での調査を行うとともに、北京図と長城図に関する研究のとりまとめを進める計画である。
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