2023 Fiscal Year Annual Research Report
Spatial analysis of the defense strategies indicated by old Chinese maps depicting Shanxi boundary region and Capital Beijing
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18K01137
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉浦 和子 京都大学, 文学研究科, 名誉教授 (50155115)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | 地図 / 清 / 八旗 / 防衛 / 長城 |
Outline of Annual Research Achievements |
(A)『北京内城図』の分析:『精絵北京旧地図』(大英図書館所蔵)とそれ以外の同類の北京図(全7点の所在が確認され、『精絵北京旧地図』が最も古い)とでは、地図中の八旗三軍(満、蒙、漢)記号の数量が大きく異なる。また、『精絵北京旧地図』では、八旗記号が柵欄などの建造物の近くに描かれ、当該施設への警備要員の駐屯が推測できるが、それ以外の北京図では対応が確認しがたい。これら2点は、地図の作成目的や用途の解明に関わる重要な問題である。そこで、北京の治安を担当する八旗歩軍營及巡捕五營のうち、主に内城を担当する八旗歩軍營の警備拠点である堆撥に注目して分析を進め、堆撥の房構成(1間から3間)と設置タイプ(城上堆撥と街上堆撥)、管轄組織(八旗と五營)の違いを確認した。八旗歩軍營は、首都の守備・警察、都市管理、消防、衛生等を任務とし、八旗と綠營を併せるという特性を踏まえ、井戸や警鐘などの施設分布や住民居住と都市活動の空間様態に照らして、検討した。(B)『山西辺垣布陣図』の分析:同図の有する意味を、北辺防衛体制ならびに周辺民族・諸外国に対する認識から分析した。モンゴル居住区と首都を隔てるゴビ砂漠の南側一帯の軍事的意味、永楽帝や宣徳帝による定期的な北辺巡行の影響、余子俊による各辺鎮での拠点を中心とする防衛策の省力効果、『山西辺垣布陣図』が示す管轄軍備区域と軍事拠点間の連携関係、帝国周辺に配置された九つの防衛拠点(鎮)と周辺諸国・諸民族の関係性を検討した。(明) 許論『九辺図・九辺図論』に示される、帝国内の山岳・河川・海洋と長城の配置に対する主要都市と軍事拠点の関係、帝国周辺の異民族や外国地域に対する情報と認識は、(明)羅洪先『広輿図』にも継承された。明代辺境軍備地図の一つである『山西辺垣布陣図』の作成背景と用途を広い視野から位置づける必要性がある。
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