2018 Fiscal Year Research-status Report
ベトナム・メコンデルタにおけるグローバル果樹産地の形成過程および土地制度との関係
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18K01140
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
金 どぅ哲 岡山大学, 環境生命科学研究科, 教授 (10281974)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 果樹産地 / グローバル化 / スターアップル / ベトナム / メコンデルタ |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,ベトナム・メコンデルタにおける果樹産地の形成過程を近年のグローバル化に注目しつつ時空間的に分析し,各時期における産地形成の要因を明らかにするものである。本年度はまず,ベトナム全国およびメコンデルタの果樹生産高と輸出額等についての時空間的な定量分析を行い,果樹種類別に生産量の高い地域を地図上にプロットし,伝統的な果樹集積地を抽出するとともに,それらの立地条件を検討した。その結果,特にメコンデルタを中心とする一部の地域では農業をめぐる社会経済条件の変化と米作農業自体の高度化・集約化の進展に伴って,米単一から米作をベースにしながら米以外の多様な作物や他の農業部門を加味した多角的・複合的農業システムへの転換が急速に進展していることが確認された。中でも注目に値するのは,メコンデルタの農家は1990年代後半から徐々に果樹栽培面積が増加させてきたが,それを担ってきたのは小規模農家であり,彼らは稲作と果樹栽培を並行し収入機会を多角化するのではなく,果樹栽培へのドラステックな転換を進めてきたことである。次に,ティエンジャン省・チャウタン 郡・ヴィンキム村における果樹産地の形成過程に関する現地調査を行った。その結果,ヴィンキム村ではかつては自給的な水田農業が営まれていたが,1980年代半ば以降スターアップルを中心とする果樹栽培への転換が行われ,現在は村内に水田として利用されている農地が全く無くなるに至っていることなどが分かった。また,ヴィンキム村は果樹流通の集積地としても機能しているが,その背景には運河などの自然環境のもたらす立地条件の優位性に加え,仲買人の増加による分業化の進展も果樹産地形成に大いに貢献していることが明らかとなった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の課題として計画していた,メコンデルタの果樹生産高と輸出額等についての時空間的な定量分析を終え,ベトナムにおける果樹生産の全体像を掴むことができた。また,当初の計画通り,ティエンジャン省・チャウタン 郡・ヴィンキム村における現地調査が順調に終わり,次年度の土地制度との関連やグローバル化の影響に関する調査に向けての足場ができたと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は,今年度の研究対象地域であるティエンジャン省・チャウタン 郡・ヴィンキム村における果樹産地の形成過程と地域社会の変容に関する現地調査を引き続き行う。その際,特に社会主義土地制度との関連やグローバル化の影響について注目しながら調査を進める。また,ヴィンキム村の比較対象としてドリアン生産の中心地である,ティエンジャン省・カイライ郡・グヒアップ村における予備調査を行う予定である。
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Causes of Carryover |
現地での費用(通訳謝金、レンタカー)の節約ができたため。
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Research Products
(4 results)