2018 Fiscal Year Research-status Report
在宅医療空白地域における支援モデルの構築に関する地理学的研究
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18K01141
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Research Institution | Kochi University |
Principal Investigator |
中村 努 高知大学, 教育研究部人文社会科学系教育学部門, 講師 (00572504)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮野 伊知郎 高知大学, 教育研究部医療学系連携医学部門, 講師 (00437740)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 在宅医療 / 中山間地域 / 高知県室戸市 |
Outline of Annual Research Achievements |
既存文献から公衆衛生学や人文地理学に関わる論点を明確にするとともに,既存の医学的データ(人口,死亡数,傷病名,受診先の医療機関,救急搬送の人数)を活用して,客観的指標をもとに受療行動を分析した。調査対象地域を高知県室戸市に設定し,在宅医療・介護における現状や取り組みの実態を把握した。その結果,同市内に救急病院がないため,田野町や安芸市といった隣接する市町の入院病床を有する病院に依存している傾向が明らかになった。そのため,救急搬送により多くの時間を要し,そのことが救命率の低下を招いていることが示唆された。 また,モデル地域の住民を対象とした在宅医療・介護のニーズ調査、生活の実態調査を実施するための現地住民へのフィールドワークを実施した。地元住民に対して,①地域包括ケアシステムにおける現況をどのように認識しているか,②近隣住民がいかなる生活環境にあるか,③住民の生活支援ニーズを把握するためにどのような取り組みがみられるか,④今後の地域包括ケアはいかにあるべきかについてフィールドワークを実施した。地元住民は医療空白地域に対する危機感を有しているものの,潜在的利用者のニーズを把握しきれていなかった。このことから,今後,現地の在宅医療を含めたニーズを把握するため,現地における詳細なフィールドワークによって,ニーズの所在と内容を精確に把握するとともに,そうしたニーズを解消するために必要な支援体制を早急に構築していく必要がある。 加えて,研究分担者の宮野はICTを活用した医療介護連携システム導入のための医療・介護事業所への説明会を実施した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
中山間地域を含む高知県室戸市における現地調査によって,理論化に不可欠な基礎的データおよび定性的データを収集することができた。高知県における在宅医療支援モデルを提示するうえで現地での住民を対象とした調査は必要である。そのため,上記の調査および分析は次年度以降の現地調査に向けて不可欠な作業過程であり,交付申請書に記載した「研究の目的」をおおむね達成したと評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
中山間地域の事例地域として,高知県室戸市に置いて調査を継続するとともに,大都市圏の事例として,横浜市港南区,神戸市北区,千葉県柏市などの大都市圏郊外の在宅医療体制を中心に地域包括ケアシステムの実態調査を行う予定である。そうして得られた調査結果は学会発表に加えて,学術雑誌に投稿する。
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Causes of Carryover |
(理由) 調査対象地域を選定するための予備調査について,複数地域で資料収集およびデータ分析を行ったが,本格的な現地調査が実施できなかったため。 (使用計画) 医療や福祉,介護サービス供給主体へのヒアリング調査のための渡航にかかる費用に充当する。また,研究成果の発表にかかる経費について,会場までの交通費および宿泊費,学会参加費に充当する。加えて,統計データや地誌に関する資料・書籍購入費が必要となる。
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