2019 Fiscal Year Research-status Report
在宅医療空白地域における支援モデルの構築に関する地理学的研究
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18K01141
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Research Institution | Ryutsu Keizai University |
Principal Investigator |
中村 努 流通経済大学, 経済学部, 准教授 (00572504)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
宮野 伊知郎 高知大学, 教育研究部医療学系連携医学部門, 准教授 (00437740)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 共助 / 津波 / 防災対策 / 高知県 / 受療動向 / 在宅医療 |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者である中村は,津波の長期浸水が想定される高知県沿岸自治体の共助に基づく地域防災の取組みが,いかにして展開されてきたのか,ヒアリングをもとに明らかにした。避難行動要支援者対策において,東日本大震災の教訓を生かして,2014年4月に避難行動要支援者名簿の作成が義務化された。情報提供の同意を得た要支援者の名簿は,避難支援組織に提供され,個別計画の策定に生かされる。しかし2019年3月現在,市町村別の避難行動要支援者数に対する提供率は平均59.3%,避難支援等関係者に対する作成率は11.9%と低調である。四万十市や三原村ではいずれも100%を示す一方,東洋町や奈半利町,北川村ではいずれも0%と地域差も大きい。高知市では名簿作成が完了したものの,個別計画の策定は一部にとどまる。自主防災組織などの支援関係組織にとって,名簿の受け取りは病気の有無や病態を含めた支援内容の情報管理の責任を負うことを意味する。これらの責任を回避しようとする支援関係組織の行動が,名簿の受け取り拒否につながっているものと推測される。他方,34.4mの最大津波高の想定が公表された黒潮町では,提供率86.0%,作成率47.9%と相対的に高い値を示す。全職員が消防団の分団をそれぞれ担当し,防災隣組を決めるとともに,避難訓練で小中学生が要支援者に避難を呼びかける活動を行っている。従来,黒潮町では男性が出漁で長期不在となる家庭が多く,女性が自主防災の主体的役割を担っている。ほとんどの職員が担当地区の出身であったり,居住地を構えており,地域住民との信頼関係がすでに構築されているケースが多い。 研究分担者である宮野は,調査対象地域において,国民健康保険および後期高齢者医療制度の被保険者のレセプト情報の分析を行い,受療動向について検討を行った。その分析により,在宅療養が困難な地域の抽出を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた室戸市における分析はデータ整理のためにやや遅れているものの,それに代わる沿岸自治体である高知県高知市や黒潮町を事例に,ヒアリングに基づく現地調査を実施することができた。また,被保険者のレセプト情報の分析を行い,受療動向について検討を行い,在宅療養が困難な地域を抽出することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
高知県室戸市における受療行動に関するデータを分析・加工することによって,在宅医療のニーズを明らかにする。現地住民へのヒアリングを実施して,社会的合理性を踏まえた在宅医療空白地域における生活支援拠点のモデルを提示したい。
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Causes of Carryover |
現地調査の調査先に変更が生じた。また,データの整理に時間を要し,本格的なデータ処理にまでは至らなかった。今後,現地調査のための旅費,データ処理のための人件費,調査結果をまとめモデルを提示するために必要な物品費を計上する予定である。
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