2021 Fiscal Year Research-status Report
国土縁辺地域における女性およびシニア起業家の空間行動とソーシャルビジネス環境
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18K01142
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Research Institution | Fukuoka University of Education |
Principal Investigator |
石丸 哲史 福岡教育大学, 教育学部, 教授 (50223029)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平 篤志 香川大学, 教育学部, 教授 (10253246)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | ソーシャルビジネス / コミュニティビジネス / SDGs |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、ソーシャルビジネスに関するこれまでの文献を地理学的視点に立ってサーベイし、国内外における概念規定と定義の多様性とコミュニティビジネスとの関係に焦点を当てるとともに、事業者リストなどのデータベースを活用しながら、ローカルな次元でのソーシャルビジネスの実態およびシニアおよび女性の活躍場面を、(1)地域産業 (2)雇用・人材育成 (3)省エネ・リサイクル (4)少子・高齢化、に関する取組からみた地方における活動実態から、地域資源の活用、地域労働市場の実態、地域消費市場の動向を明らかにした。 とりわけ、今年度は、定義・概念規定などについて主として経営学の成果を援用しながら、ソーシャルビジネスに対して地理学的分析に臨んだ。国土縁辺地域などの地方圏においては、人口減少や高齢化、雇用機会の減少など持続不可能な状況に陥っている地域が少なくないが、このような衰退地域の再生の切り札としてソーシャルビジネスへの期待が高まってきたが、ソーシャルビジネスを持続可能な社会づくりの救世主とし過度に依存することには警鐘も鳴らされている。 一方、今後のソーシャルビジネスの行方を考えるうえで重要になってくるものが、国連が定めた SDGs(持続可能な開発目標)である。SDGs はグローバルな課題であるが、当事者意識を醸成させるために、SDGs のローカライゼーションが積極的に展開されている。とりわけ、自然環境に関する SDG の 13、14、15 番については、空間的にグローカル思考が描けるだけに、グローカルな文脈において持続可能な社会をめざした取組が展開されている。 グローバルな目標としての SDGs をどう達成するかというバックキャスティング的思考のもとで課題解決に取り組んでいる。SDGs 達成のためのニーズとシーズのマッチングが明確になり、ソーシャルビジネスの幅を広げたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
コロナ禍で達成できなかった2020年度実施予定の現地調査を2021年度に実施することによって研究の遅れを取り戻そうと計画していたが、当該年度も感染拡大による行動制限と訪問先への配慮のため、十分に現地調査を行うことができなかった。この遅延を回復すべく、デスクワークに傾注し文献サーベイや調査分析資料の解析に尽力するとともに、受け入れ先との関係でコミュニティビジネスに焦点化するなど、軌道修正した結果、若干の遅れにとどまった。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、以下の点に重点を置き研究を展開し、これまでの成果を総括していく。 1.近年のソーシャルビジネス事業者の多くは,グローバ ルな目標としての SDGs達成に貢献しているが、これまで日本において特徴的であった地方における衰退地域の再生を地域資源の活用によって達成するものとはビジネスモデルが異なるところがあるが、両者の問題の所在は持続不可能な社会の状況や場面から生起したものである。したがって、今後は両者に目を向け、持続不可能性の回避という社会的ニーズと、これを解決する上で活用されるべき地域構成要素としての地域資源をシーズとしているソーシャルビジネスに関心を寄せながら研究を推進していく。 2.コミュニティビジネスでは, ニーズとシーズの地域内完結が一般的にみられるが,ニーズすなわち社会的課題解決の要請は域内では完結せず広域的に存在し,その課題解決に際して地域のシーズを活用することによって,地域に雇用が創出され,所得が発生するならば,このパターンは従来のコミュニティビジネスの域を越えた,地域に根差した,持続可能な地域創生をめざすソーシャルビジネスといえる。そこで、今後は、コミュニティビジネスの実態に照射することによって、「地域性」を浮き彫りにしていく。 3.上記の「地域性」と関連して、今後のソーシャルビジネスを議論する上で重要になっていくのは,地域のソーシャルキャピタルである。とりわけ地方においては,地域社会のソーシャルキャピタルがソーシャルビジネスの展開上大きなカギを握っている。本研究の総括を行う際には、この点を考慮しながら進めていく。
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Causes of Carryover |
コロナ禍で達成できなかった2020年度実施予定の現地調査を2021年度に実施することによって研究の遅れを取り戻そうと計画していたが、当該年度も感染拡大による行動制限と訪問先への配慮のため、十分に現地調査を行うことができなかった。この遅延を回復すべく、デスクワークに傾注し文献サーベイや調査分析資料の解析に尽力するとともに、受け入れ先との関係でコミュニティビジネスに焦点化するなど、軌道修正した結果、旅費が大幅に使用されなくなり、書籍等物品費に費やされた。したがって、次年度は、実施できなかった現地調査および成果報告を最優先に実施し、これにかかる費用をあてた。
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