2019 Fiscal Year Research-status Report
超高級食材をめぐる国際産地間競争の動態分析-Wagyuの産地システム変動を事例に
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18K01145
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
大呂 興平 大分大学, 経済学部, 教授 (50370622)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | wagyu / 家畜改良 / 生産 / 販売 / 超高級食材 |
Outline of Annual Research Achievements |
2年目である令和元年度は,初年度に続いて海外のwagyu産業における生産・流通・販売の現状や産地体制の把握を進めた.具体的には,世界随一の肉牛大国でありながら既存の調査報告に乏しいブラジルのwagyu産業について,wagyu協会などの業界団体,主要な生産者,販売組織等に調査を行った.また,イギリスやスペインを対象とした初年度の調査結果を速報的に取りまとめて報告した. ブラジルwagyu産業の詳細な調査では,初年度に導出された研究視角を踏まえ,各国に根付いてきた肉牛生産をめぐるローカルな「制度」と主体の行動に注目してwagyu産業の変動の理解を試みた.ブラジルの調査からは,主に以下の点が整理された.(1)低品質の牛肉の低コスト・大量生産を主体としてきたブラジルでも,近年の国内外の経済発展とともに生産の高級化が追求されるようになり,穀物肥育によるwagyu生産が追求されつつある.(2)ブラジルは,経腟採卵・体外受精を用いた受精卵の作成・移植の技術やその現場での普及において世界で最も先行しており,こうした既存の技術を駆使したwagyuの個体の増殖が目覚ましい.(3) ただし,歴史的に大量生産・大量流通の仕組みを洗練されてきたブラジルでは,高付加価値の牛肉の処理・加工・販売における主体や仕組みが歴史的に成立しておらず,ブラジルがWagyuの世界的な輸出拠点に成長できるかはこの点の克服が問われている.(4)ブラジルでは巨大な企業グループが,上記のような課題の克服を試みて投資を行っており,そうした主体の対応がwagyu産業の動向を強く規定していくと考えられる. 3年目となる令和2年度は,海外wagyu産地の動向を把握すべく可能な範囲で現地調査を継続するとともに,高付加価値農産物の産地間競争を体系的に分析できる枠組みを完成させ,wagyuをめぐる国際産地間競争とその動向を規定する諸条件について検討したい.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は,海外でのwagyu産地の調査を進めることができ,また,成果も速報的に報告できたため,おおむね計画通りに研究を遂行できた.ただし,wagyuの改良・加工・販売に関する仕組みを主導的に作ろうとしているオーストラリアへの調査が,新型コロナウイルス蔓延の影響で実施できなかった.
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Strategy for Future Research Activity |
産地の動態を体系的に説明するための分析枠組みを洗練させる必要があり,そのための取り組みを継続したい.また,新型コロナウイルスによる影響で不透明な情勢ではあるが,可能な限りオーストラリアなど海外産地での追加調査を行いたい,これらの作業を通じて,最終的には,wagyu産業をめぐる国際産地間競争の動態を整理することで,成果として取りまとめたい.
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Causes of Carryover |
オーストラリアでのwagyu調査を予定していたが,新型コロナウイルスの世界的蔓延に伴い出張をキャンセルせざるを得なかった.今年度は感染症の広がりの動向を見極めつつも,可能な限り調査を実施したい.
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