2020 Fiscal Year Research-status Report
超高級食材をめぐる国際産地間競争の動態分析-Wagyuの産地システム変動を事例に
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18K01145
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
大呂 興平 大分大学, 経済学部, 教授 (50370622)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | wagyu / 和牛 / 食料貿易 / 販売 / 超高級食材 |
Outline of Annual Research Achievements |
3年目である令和2年度は,当初は,オーストラリアおよび米国での現地調査を通じて,海外のwagyu産業における生産・流通・販売の現状とその背後にある産地体制を把握し,高付加価値農産物の産地間競争を体系的に整理することを予定していた.しかし,新型コロナウイルスの拡大に伴う各国の渡航禁止措置により,これらの現地調査が不可能になり,必要な情報を収集することが困難となった.各国のwagyu産業の実態については,公式的な統計データに乏しく,関係機関への聞き取りを通じて得られる情報や内部資料に依るところが大きい.情報収集の手段が限られたため,研究の進め方を大幅に見直さざるをえなかった. このため本年度は,世界最大のwagyu産地となっているオーストラリアについて,wagyuの導入および世界的な輸出拡大の背後にあった同国の肉牛産業全体の現状やその歴史的展開について,文献サーベイや統計を検討することで整理した.オーストラリアの牛肉産業では,(1)国内市場が狭隘であり他国と比べても輸出市場に販路を見いだすことがきわめて重要であったこと,(2)2000年代初頭においては日本市場の重要性が相対的に低下するとともに東南アジアや欧州の市場の重要性が増し,生産者にとってはwagyuを自らブランド化して販売する強い動機付けがあったこと,(3)2010年代以降も生産コストにおいてオーストラリアよりも競争力に優る南米諸国との競争が激化し高付加価値化が問われていたこと,(4)オーストラリアには,日本の料理体系に位置づけられていた和牛を,西洋料理の文脈に位置づけて高級食材として解釈し直す能力を持っていたこと,などが整理された. 来年度は,可能な限り現地調査を試みるとともに,得られた情報の範囲で研究をとりまとめたい.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
各国のwagyu産業の実態については,公式的な統計データに乏しく,関係機関への聞き取りを通じて得られる情報や内部資料に依るところが大きい.ところが,2020年度は新型コロナウイルスの拡大に伴う各国の渡航禁止措置により,現地調査が不可能になり,必要な情報がほとんど収集できなくなった.このため,研究の進め方を大幅に見直さざるをえなかった.他方で,代わりに実施したオーストラリアの肉牛部門の概況把握は順調に実施できたため,次年度中にとりまとめを行う予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
可能であれば,オーストラリアおよび米国での現地調査を実施したい.また,産地の動態を体系的に説明するための分析枠組みを洗練させる必要があり,そのための取り組みを継続したい.これらの作業を通じて,最終的には,wagyu産業をめぐる国際産地間競争の動態を整理し,成果として取りまとめたい.
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Causes of Carryover |
海外での現地調査を予定していたが,新型コロナウイルスにより海外渡航が不可能となったため,主に旅費が使用できなかった.本年度は現地調査を可能な範囲で実施したい.
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