2019 Fiscal Year Research-status Report
On the development of regional integration by new economic networksystems in the age of Republic of China,the first half of 20th century.
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18K01154
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Research Institution | Aichi University |
Principal Investigator |
藤田 佳久 愛知大学, 東亜同文書院大学記念センター, 名誉教授 (70068823)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 東亜同文書院 / 東亜同文会 / 東亜同文書院生の大旅行調査」 / 日清貿易研究所 / 支那省別全誌 / 支那経済全書 |
Outline of Annual Research Achievements |
昨年につづき、本年も史資料収集とその内容の検討をつづけた。具体的な史資料は20世紀前半期における東亜同文会の支那経済関係者と東亜同文書院生の「大旅行調査報告書」を使用し、検討を続けてきた。そのためのアプローチとして本年度は、まず「荒尾精と日本初のビジネススクール:日清貿易研究所の誕生」をまとめ、『同文書院記念報』vol.28に掲載した。東亜同文会と東亜同文書院が、当時の「支那」(中国)の経済事情を省単位や地域単位、フィールドワークのルートに沿う形で記録する大事業に至った原点は、東亜同文書院開設に至る10年前の日清貿易研究所の開設にあり、そこでの国際的ビジネス教育と貿易商品取扱実践がベースとなった。ここではなぜそのようなきわめてユニークな国際的ビジネススクールが誕生したのか、またそのためにどうようなビジネス教育が創出されたかを明らかにした。 次に「東亜同文書院生の「大旅行」の展開と記録された近代中国像」(東亜同文書院記念報.vol.28)では、具体的な書院生の中国各地への大旅行記録の中から、清末期から民国期にかけての混乱期における経済、政治、社会の変動する姿を浮かび上がらせるとともに、このような動きの中からその基礎的地域の構成をも把握し、地域間ネットワークの基盤を明らかにすることができ、今後の研究の下地ができたと考えている。 もう1点、以上にも関係するが、そのような清末から民国期の変動の中で、書院卒業生たちがどのように民国期の中国や戦前、戦後の日本で就業し、活躍したかを明らかにしようとした『東亜同文書院卒業生の軌跡を追う』(あるむ)の編著を担当した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
2年目に入る前は関連資料がきわめて多いため、それらを捗猟するのに時間がかかったが、2年目はそれらをかなり捗猟、検討できるようになった。基本的には、(A)荒尾精のフィールド資料を根津一がまとめた『清国通商綜覧』、(B)東亜同文書院生のフィールドワークをまとめた『支那経済全書』全12巻、(C)『支那省別全誌』全18巻、改訂9巻中断、(D)書院生の「大旅行報告書」(各学年の各旅行コース別)、および(E)関連資料類などが検討対象である。しかし、2020年に入りコロナウイルス拡大により、国会図書館や各地図書館の閲覧、書院卒業生への面談が制約され、少し進捗状況に遅れが出た。ただし、前記(A)~(D)の諸資料については検討がすすみ、民国期の中国が開港後、ネットワークの核心が上海と漢口に絞られ、天津や広東などは副次的な核に留まったこと、上海と漢口は海運航路の開発でネットワーク化され、それにともなう地域統合化が進み始めたことが資料、データから読み取れ、長江経済圏の形成が芽生え、展開することを確証することが出来た。その動きを時期的に検討し、作図化するメドがつきつつある
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Strategy for Future Research Activity |
前記の基本資料(A)では、清末における港湾開港時のその後のネットワーク化への初期条件を若干の貿易品を中心に取扱業者や流通システムの萌芽も考慮しつつ検討し、(B)ではより具体的な貿易品を中心にネットワーク化への方向性を把握できそうである。また(C)ではそれらを個別の省、越省レベルでの動きを把握し、(D)では主に漢口市場の形成と発展というプロセスを軸として、周辺地域への波動とその条件を把握できると考えている。とりわけ、民国期における内陸部の拠点となっていく漢口をネットワークの拠点としてその発展過程と交易商品、交易市場、流通業者、輸送路と輸送機関、生産地域とのかかわりなども対象とし、総合的にネットワーク化の実態を明らかにする。こうして当時到達した地域システムを把握することにより、それが戦後の開革開放後のシステムへの影響レベルも検討したい。
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Causes of Carryover |
令和2年当初よりのコロナウイルス感染拡大のため、東京(国立国会図書館等)での史資料調査の実施が不可能であった。また、それに関連し、文献図書の購入ができなかったため、次年度使用額が生じた。令和2年度は、これら史資料を購入及び、可能ならば東京等での史資料調査を行う。
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Research Products
(9 results)