2022 Fiscal Year Research-status Report
ハワイにおける日本人の「居住空間」とジェンダー~国際移動の視点から~
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18K01155
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Research Institution | Sugiyama Jogakuen University |
Principal Investigator |
影山 穂波 椙山女学園大学, 国際コミュニケーション学部, 教授 (00302993)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2024-03-31
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Keywords | ジェンダー / 権力 / 居住空間 / 日系人 / ハワイ |
Outline of Annual Research Achievements |
これまで収集してきた戦前から戦後にかけての日系人・日本人に関する資料の整理を行った。女性たちのハワイ社会における位置づけに関する資料が中心であるが、日系人の第二次世界大戦における状況についても資料を収集、整理をした。 第1に、戦後、GHQの支配下で日本に駐留していた軍人・軍属などと結婚してハワイに渡航したいわゆる「戦争花嫁」に関する資料を検討した。改めて、女性たちの置かれた状況が、時代によって影響を受けており、ハワイで生活をすることを選択して暮らしている状況が明らかになった。その中で、自分たちの居住空間を形成している。第2に、ハワイへの桜の植樹運動について推進している方にメールでの調査を進めた。コロナ禍で活動は縮小されてるものの、高知の牧野植物園との交流は続いており、メンバーが積極的に情報収集を進めていた。第3に戦時中の日系人の動向について資料収集した。ハワイの強制収容施設に収容されていた人たちのライフストーリーからは、孤立した生活の中で自分を保ち続ける困難さが記されている。同時に戦後の日系兵と相違にも注目した。そこで、日系兵がヨーロッパ戦線での業績がどのように表象されているのか調査を実施した。ヨーロッパ戦線での第442連隊の活躍は、ハワイにおいては有名であるが、日本でもあまり知られてはおらず、ヨーロッパではどのようにとらえられているのかを確認するのが目的である。今年度は日系兵が解放したユダヤ人強制収容所ダッハウについて検討した。現地ではアメリカ軍がダッハウを解放し、その後のケアを行ったことは記されているものの、日系兵に関する言及は見られなかった。日系人のおかれた立場を改めて検討する意義が確認できた。 ジェンダー視点での地理学研究を進める意義についても確認し、「地理学と女性」として概要をまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ハワイ現地での調査を実施する予定であったが、調査日程が対象者と合わず今年度は渡航を見合わせた。一方で、第二次世界大戦にかかわる日系人の調査をハワイのホノウリウリ強制収容所への調査から発展させて調べ、日系兵にも着目した。日系人部隊であった第100大隊と第442連隊はヨーロッパ戦線で活躍したものの、多大な犠牲を出し、またその業績は連合国軍にとって敵国である日本のルーツによる人々が結成した部隊として長い間不可視化されてきた。そこでミュンヘン近郊に立地するダッハウ強制収容所跡を訪問した。ダッハウでの展示から日系兵に関する情報は得られなかったが、アメリカ兵という括りの中で日系兵を扱う記載からは、改めてアイデンティティの問題を提起する機会とみることができた。今年度日系兵がアメリカでも有名なテキサス部隊を解放したブリュイエ―ルにも訪問する予定であったが、訪問時にフランスでストライキに合い、残念ながら行くことができなかった。2023年度に調査を予定している。 これまでに集めた資料に関して整理を進め、メールでの情報収集も行った。ただ、現地での調査対象者たちによる積極的な活動に関しては調査が十分にできなかった。さらなる調査を実施する予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度、現地調査実施する予定である。ハワイでの調査とともに、今年度訪問がかなわなかった、テキサス部隊を解放し442連隊の名前が通りの名前として残っているブリュイエ―ルでも調査を行う予定である。 第1にこれまでの研究を継続してホノルル在住の戦後移住の日本人女性へのインタビューの補足調査を行う。第2に桜の植樹運動に関する調査も継続して進める。中心となっているハワイサクラ基金への調査を行う。第3に第二次世界大戦とハワイの人々の動向に関する調査を行うことで、戦後の日系人・日本人とのつながりについて調査を行う予定である。 最終年となるため、それぞれのテーマにそって発表する予定である。 コロナの影響で現地調査、また国内での資料収集のための出張が不可能となり残額が生じた。今年度は現地調査を実施する。また、これまでの書類の整理、資料のデータ化、海外資料の取り寄せなどに予算を回す予定である。
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Causes of Carryover |
コロナの影響で現地調査、また国内での資料収集のための出張に変更が出たため残額が生じた。今年度、現地調査を実施する。
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