2018 Fiscal Year Research-status Report
ファッション・デザインとの交差からみる地域文化の現代的消費と新たな地域表象
Project/Area Number |
18K01157
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Research Institution | Nanzan University |
Principal Investigator |
濱田 琢司 南山大学, 人文学部, 教授 (70346287)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 地域文化 / 地域表象 / 文化的消費 / ファッション・デザイン / 伝統的手工芸 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,2000年代前後以降の地域文化をめぐるいくつかの消費状況のうち,ファッション/デザインの場と伝統的地域文化,とくに伝統的手工芸を中心とする工芸文化との関わりを,その文化的な背景・歴史的な流れなども含めて,検討することを目的としたものである。 本年度は初年度であり,研究課題における事例,すなわち,ファッション/デザインの場としての伝統的な地域文化の具体的な消費の場である,大手セレクトショップのビームスおよびD & DEPARTMENT PROJECTという企業についての,全般的かつ継続的な調査を実施した。後者については,D & DEPARTMENT PROJECTが展開する諸店舗における各地の物産の取り扱い状況およびd47 MUSEUMの企画内容などの調査を実施し,前者については,とくにビームス・フェニカという部門についての資料調査やヒアリングによる調査を実施することで,こうした事例において,伝統的な地域文化がどのような形で位置づけられているのかを把握した。このうち,ビームスに関しての調査成果の一部は,口頭での報告も行っている。 また,こうした事象の文化的・歴史的な背景としては,近年の工芸文化消費に大きな影響を与えている,日本民芸運動とその周辺をめぐる事象の調査を実施し,近代期における価値付けが,現在の文化消費において流用されている可能性等についての検討も行った。この成果の一部は,『子どもたちの文化史』(是澤博昭・日高真吾編)の1章(「玩具と工芸性」)および『子ども/おもちゃの博覧会』(笹原亮二編)の一部(「うつわのある玩具」)として公表もしている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記のように判断できる主たる理由の一つは,研究課題において具体的な事例として提示をした,セレクトショップのビームスおよびD & DEPARTMENT PROJECTについて,実地調査および資料調査ともに,おおむね当初に予定した進捗において調査が実施されていることによる。また,そうした調査の成果の一つとして,ビームスの社員と共同しつつ,「BEAMS fennicaと民芸」という報告を実施することができた点も,この理由の一つである。 他方,この報告にもあるように,「民芸」および,この概念を普及させた民芸運動という文化運動は,こうした近年の地域文化消費動向にとって,大きな存在の一つでもある。この文化運動について,いくつかの地域文化消費との関連から検討することで,本研究課題の文化的・歴史的背景の一端を考察することができたことも,進捗状況がおおむね順調であると判断できることの一つである。この点については,その成果の一部を,『子どもたちの文化史』(是澤博昭・日高真吾編)に濱田琢司「玩具と工芸性─「伝統」と「用」,そして,うつわのある玩具から─」として,また『子ども/おもちゃの博覧会』(笹原亮二編)に濱田琢司「うつわのある玩具」として発表することもできた。 こうした状況を総合的に踏まえて,本研究課題の進捗は,おおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は,第一に,2018年度の調査内容を引き継ぎつつ,具体的事例についての検討の深度と文化的・歴史的背景についての理解をさらに深めていく。同時に,研究計画においても示しているように,ビームスやD & DEPARTMENT PROJECTといった企業といくつかの具体的な地域との関わりについても検討を行っていく。そしてそうした具体的地域についてみられる,新たな地域表象について分析を行っていくことで,既存の地域文化に,どのような形で新しい意義が付与されていくのかを,具体的に考察していく予定である。 その成果については,学会での発表とともに,一部は,論文としての成果の公表も予定している。 また,本研究の課題となっている,ファッション・デザインと地域文化との交差は,昨年度よりさらに大きく展開しているようにもみえ,そうした新たな状況についても加味する形での調査を行って行く予定である。
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Causes of Carryover |
おおむね計画通りに使用できたが,資料整理などのための人件費を,入力の効率化等によって削減することができたことなどから,「次年度使用額」が生じた。2019年度は,調査旅費の支出が増える見込みがあるため,この部分を補うものとして使用する予定である。
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