2019 Fiscal Year Research-status Report
ファッション・デザインとの交差からみる地域文化の現代的消費と新たな地域表象
Project/Area Number |
18K01157
|
Research Institution | Kwansei Gakuin University |
Principal Investigator |
濱田 琢司 関西学院大学, 文学部, 教授 (70346287)
|
Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
Keywords | 地域文化 / 地域表象 / 文化的消費 / ファッション・デザイン / 民芸 / 農民美術 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は,2000年前後以降の地域文化をめぐるいくつかの消費状況のうち,ファッション/デザインの場と伝統的地域文化,とくに伝統的手工芸を中心とする工芸文化との関わりを,その文化的な背景・歴史的な流れなども含めて,検討することを目的としたものである。 第2年度目である2019年度には,本研究の主要な事例である,大手セレクトショップ・ビームスおよびD & DEPARTMENT PROJECTという企業について,昨年度から継続して,資料調査,聞き取り調査などを進めると同時に,類似の状況についての,歴史的な系譜についても調査・検討を行った。特に近代期から戦後期にかけての日本の手工芸をめぐる動きとして,農民美術運動と民芸運動という二つの文化運動に注目し,その展開や各時代における「現代的」展開についての考察を行った。とくに,本研究のテーマにも関わる,新たな消費の枠組みの発生と新たな地域の表象との関わりについて,かつての状況を検討することで,2000年代以降の状況を考える視点を得た。この歴史的な系譜に関する研究成果の一部は,「「地元有力者」とローカルな文化振興・文化運動─ヤハギ川観光協会から名古屋民藝協会の本田静雄─」(『関西学院史学』47号,51-68頁)および,学会発表「モノと地域性─創作玩具・農民美術・新作民芸,それぞれの実践から─」(第35回民族藝術学会大会,2019年4月20日,於:飯田市美術博物館)とこの報告を元にした論文「創作の工芸と地域性─農民美術の継承をめぐって─」(『民族藝術学会誌 arts/ 』36号,127-136頁)としても公表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記のように判断できる主たる理由は,本研究で対象とするような伝統的地域文化の「現代的消費」に関して,その歴史的な系譜をたどりつつ,上記「研究実績の概要」にも示した論文「「地元有力者」とローカルな文化振興・文化運動─ヤハギ川観光協会から名古屋民藝協会の本田静雄─」や「創作の工芸と地域性─農民美術の継承をめぐって─」といった成果を得ることができたことによる。 また,ビームスおよびD & DEPARTMENT PROJECTを対象とした2000年代以降の状況についても,それぞれの組織の取組についての調査や関係者への聞き取り等も順調に進捗できている。 新型コロナウイルス感染症の影響があり,年度末近くに予定していたいくつかの調査を見送ることになったこともあったが,この点を踏まえても,綜合的にみて,本研究課題の進捗は,おおむね順調に進展していると判断できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
2019年度は,本研究課題にかかる歴史的な系譜についての成果を公表したが,2020年度は,研究課題の中心的な対象となるビームスおよびD & DEPARTMENT PROJECTの取組みついて,より積極的に検討する。その際には,これらの企業と直接的な関わりをもついくつかの生産地域あるいは地域の生産者との関係についても注目していく。それによって,日本の伝統的地域文化の一つとしてのローカルな手工芸に関する現代的な消費の在り方が,それらをめぐる地域表象にどのような変化をもたらしているのかを,歴史的な系譜とともに相対化しつつ,より具体的に考察を行っていく。 その成果については,一部は論文としても公表しつつ,より広範な報告書もまとめる予定としている。 また,本研究課題となっている,ファッション・デザインと地域文化との交差は,近年,より大きく展開してもいるため,そうした新たな状況についても考察に含めながら研究を推進する予定である。
|
Causes of Carryover |
おおむね計画通りに使用できたが,年度末近くに予定していた調査が,新型コロナウイルス感染症の影響を鑑み取りやめたため,その分の残額が生じた。この分の調査は,2020年度に実施予定であり,「次年度使用額」も主にその調査に使用する。
|
Research Products
(3 results)