2018 Fiscal Year Research-status Report
Cultural evolutionary approach on the ethnic conflict among pastoral societies in East Africa.
Project/Area Number |
18K01162
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
曽我 亨 弘前大学, 人文社会科学部, 教授 (00263062)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 民族対立 / 文化進化論 / 文化繋留型ゲーム / ジレンマ / 牧畜社会 / 東アフリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年8月15日から9月12日にかけて、エチオピア国オロミア州ボラナ県において現地調査を実施した。調査においては、最初に、平成29年9月以降の11ヵ月間に発生した民族紛争や殺人などの記録を確認した。この期間は、民族対立が激化しており、平成29年9-12月にかけて21件、平成30年1-8月には26件の事件が生じていた。これらの事件について原因や場所など細かな聞き取りを行い、紛争のなかで人々が感じたジレンマを抽出した。 民族対立が激化した背景を包括的に理解するため、国家的文脈に注目したところ、平成30年3月に就任したアハメド新首相が押し進めている民主化政策が影響していた。これまで非合法化されていた政党のテロ指定が解かれ、相次いで政治指導者が亡命先から帰国しており、このなかには、調査地であるオロミア州において大きな力を有するオロモ解放戦線も含まれていた。調査地では、オロモ解放戦線の噂話がひろまっており、一方ではオロモ民族とソマリ民族の対立を肯定する文脈で、他方ではオロモ民族とソマリ民族の対立を否定する文脈で使われていた。さらに、オロモ解放戦線への人気の高まりと対応して、調査地近くのヤベロ税関が焼き討ちされ、密輸が公然と行われるようになるなど、政権への不満が高まりを見せていた。政権の弱体化が民族対立の増加に結びついたと考えられた。 以上の現地調査をもとに、文化進化理論を適用したゲーム設計に着手した。当初、ゲームの試行結果にもとづいてプログラミングを実施する予定であったが、文化進化論の第一人者である竹澤の助言により、むしろ、おもちゃのコインと封筒等を用いたアナログ仕様のゲームを設計した方が効果的であると判断した。紛争の事例のなかで人々が感じたジレンマを手がかりに、文化繋留型のジレンマゲームを試作した。さらに、このゲーム実験を現地で行うことが出来るかを確認した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画に記したとおり、(1)民族対立の事例を多く集めることができ、その詳細な聞き取り調査から、ジレンマ状況などを抽出することができた。(2)現地の環境にあわせて、適切なゲーム設計の方法を確定することができた。(3)文化繋留型ゲームのプロトタイプを完成することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成31年度においては、平成30年度と同様に紛争事例の収集をするとともに、ゲーム実験の本格実施に着手する。ただし、文盲率の高い地域でゲーム実験をすることを考えると、ゲームの説明が理解されないこともあり得る。現地において、適宜、修正を加えながら、データの蓄積をめざす。研究計画に変更すべき点は何もない。
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[Book] 遊牧の思想2019
Author(s)
曽我亨(太田至・曽我亨 共編)
Total Pages
376
Publisher
昭和堂
ISBN
4812218241