2020 Fiscal Year Research-status Report
Cultural evolutionary approach on the ethnic conflict among pastoral societies in East Africa.
Project/Area Number |
18K01162
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
曽我 亨 弘前大学, 人文社会科学部, 教授 (00263062)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 民族対立 / 文化進化論 / 文化繋留型ゲーム / ジレンマ / 牧畜社会 / 東アフリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
令和2年度においては、新型コロナ感染症の流行による渡航制限の影響で、エチオピア国における現地調査を実施することができなかった。研究計画に遅延が生じたが、次の3点については研究を進めることができた。ひとつはエチオピア国における政治状況に関する情報収集であり、これは主としてBBC, CNN, Al Jazeeraの報道をもとに行った。現在、エチオピア政府軍とティグレ人民解放戦線のあいだで戦闘状態が続いているが、他の地域でも民族の名称を冠した州と州の境界(たとえばAfarとSomali)において紛争が激化していることが明らかになった。こうした州境・県境をめぐる民族対立は、民族に基盤をおいたエチオピアの政治に固有の問題であり、かつて他地域における紛争がエチオピア国オロミア州ボラナ県周辺にも飛び火することがあったことから、網羅的にデータを収集した。2つ目はボラナ県周辺において令和元年9月(昨年の調査)以降に発生した民族紛争や殺人などの記録収集である。これは現地の調査協力者2名によって実施され、電話によって定期的に収集状況の確認をおこなったが、情報の集計まではできなかった。最後に、文化繋留型ゲームの再検討である。令和元年度の調査において、現地の人から、囚人のジレンマゲームの利得構造がイスラム教の「利子」にあたるとの疑義がでた。そこで、これに替わる文化繋留型ゲームとして、公共財ゲームを基にしたゲームの可能性を検討した。しかしボラナ県の牧畜民において、納税の機会は家畜を市場で売却したときの家畜税(qarat)に限られており、さらに「公共財」という概念に該当する具体的な事象がほとんど存在しない。既存の公共財ゲームは、お金の提供と配当をベースにしていることから、必ずしも現地の状況に合っているとは言えず、現地の状況にあわせてデザインしなおすことの重要性を再認識するに至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究実績にも記したように、新型コロナ感染症の流行による渡航制限により、令和2年度には現地調査を実施することができなかった。いくつかの点で研究をすすめることもできたが、本研究は、現地調査を中心とする研究計画をたてていたことから、遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
新型コロナ感染症のワクチン接種を受けることができた場合には、エチオピア国の流行状況を踏まえ、可能であれば現地調査を実施する。一方、現地調査を実施できないことも念頭に、国内で可能な研究を充実させていく。具体的には文献を用いて文化進化論への理解を深め、現地の状況に合致する抽象度を有する文化繋留型ゲームを考案し、大学内で協力者を募り、ゲームを用いて実験を実施する。また、新型コロナ感染症が終息した後に充分なデータを入手できるよう、現地協力者による紛争事例の収集を継続し、さらにエチオピアの国内政治に関する情報も収集していく。
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Causes of Carryover |
令和2年度は新型コロナ感染症の流行により海外渡航が困難となり、現地調査を実施できなかった。予算は現地調査を前提に組んでいたことから使用しなかった。令和3年度は、ワクチン接種の状況によっては、現地調査を実施する。一方、現地調査を実施できない可能性があることを踏まえ、国内で可能な研究を充実させていく。具体的には文献の収集や大学内での実験の実施などに予算を執行していく。
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Research Products
(1 results)