2021 Fiscal Year Research-status Report
Cultural evolutionary approach on the ethnic conflict among pastoral societies in East Africa.
Project/Area Number |
18K01162
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
曽我 亨 弘前大学, 人文社会科学部, 教授 (00263062)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 民族対立 / 文化進化論 / 文化繋留型ゲーム / ジレンマ / 牧畜社会 / 東アフリカ |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は、新型コロナ感染症の流行がさらに広がったこと、エチオピア国における内戦の影響などが原因で、エチオピア国における現地調査を実施することができなかった。研究計画にも大きな遅延が生じている。その中でも、国内で行える調査として、以下の3点を行った。 (1)エチオピア国における政治状況に関する情報収集を、BBC, CNN, Al Jazeeraの報道をもとに行った。令和2年より、エチオピア北部において、政府軍とティグレ人民解放戦線TPLFが戦闘を繰り広げている。令和2年度は政府軍がTPLFを圧倒していたが、令和3年6月頃からTPLFの反撃が強まり、州都を奪還し、さらに首都アジスアベバの200-300kmにまで迫ることになった。さらに反政府民族団体9派による同盟が成立し、エチオピア南部からオロモ開放戦線OLFが進軍するなど、政府軍への攻勢を強めた。これに対し政府軍は無人攻撃機などの導入を進め、12月からは逆に政府軍がTPLFを追いつめる状況にあるという。こうした紛争は、現地に大きな影響をあたえていると予想されることから、網羅的にデータを収集した。 (2)ボラナ県周辺における、ローカルな民族紛争や殺人などの記録収集をおこなった。これは現地の調査協力者2名によって実施され、電話によって定期的に収集状況の確認をおこなったが、情報の集計まではできなかった。 (3)文献を用いて文化進化論への理解を深めた。また、文化繋留型ゲームとして、現地の状況に合致するように公共財ゲームを改良する可能性を検討した。しかし、現地において公共財(学校等)を作る場合は、人々が「誰が協力して、誰が協力していないか」を互いに厳しくチェックしていることから、公共財ゲームの枠組みでは、人々が非協力を選択する余地がほとんどなく、公共財ゲームによる協力行動の評価ができないという問題があると思われた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
研究実績にも記したように、新型コロナ感染症の流行による渡航制限と、エチオピア国における内戦等により、令和3年度には現地調査を実施することができなかった。いくつかの点で研究をすすめたが、本研究は、現地調査を中心とする研究計画をたてていたことから、遅れていると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
エチオピア国の新型コロナ感染症の流行状況および内戦の状況を踏まえ、可能であれば現地調査を実施する。一方、現地調査を実施できない場合は、新型コロナ感染症や内戦が終息した後に充分なデータを入手できるよう、現地協力者による紛争事例の収集を継続し、さらにエチオピアの国内政治に関する情報も収集していく。
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Causes of Carryover |
令和3年度は新型コロナ感染症の流行とエチオピア国の内戦により、現地調査を実施できなかった。予算は現地調査を前提に組んでいたことから使用しなかった。令和4年度は、新型コロナ感染症の流行とエチオピア国の内戦の状況を踏まえながら、可能であれば現地調査を実施する。一方、現地調査を実施できない可能性があることを踏まえ、国内で可能な研究を充実させていく。具体的には文献の収集や大学内での実験の実施、国内研究者との研究連絡などに予算を執行していく。
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