2018 Fiscal Year Research-status Report
マダガスカルにおける損失の回復をめぐる観念の歴史的過程と共時的生成の統合的研究
Project/Area Number |
18K01167
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Research Institution | Tokyo University of Foreign Studies |
Principal Investigator |
深澤 秀夫 東京外国語大学, アジア・アフリカ言語文化研究所, 教授 (10183922)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | マダガスカル / 法令と取り決め / 負債の回復 / 私的制裁 / 慣習法 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年7月23日~同年10月8日の間、マダガスカル現地における研究を実施した。アンタナナリヴ大学文明研究所考古-芸術博物館の研究員から現在のマダガスカルの治安状況とそれに対する治安機関と住民双方の対策についての情報を収集した。国立公文書館において、19世紀のImerina王国が布告した法令についての文書情報を収集した。北西部の町Majungaにおいて、特定の地区における治安状況と家宅侵入犯等に対する対策状況を調査すると共に、北西部において組織化が進んでいるBe Saboha<たくさんの槍>と称される住民の自主治安対策組織についての聞き取り調査を行った。 2019年1月21日~同年3月5日の間、マダガスカル現地における研究を実施した。アンタナナリヴ大学文明研究所考古-芸術博物館の研究員から、首都における治安対策、とりわけ住民の間での自主的取り組みについての情報を入手した。また、国立公文書館において引き続き、19世紀のImerina王国が布告した法令についての文書情報を収集した。北西部の町Majungaにおいて、引き続き特定の地区における治安状況と家宅侵入犯等に対する対策についての情報を収集した。北西部の町AntsohihyおよびPort-Bergerにおいて、上記のBe Sabohaの組織化についての情報の聞き取り調査を実施した。 日本とマダガスカルにおいて、ネットからfitsaram-bahoaka<民衆の裁判>と呼ばれる犯罪者に対する住民等による非公式な制裁についての公開情報を収集し、それが生じた状況の比較検討を行っている。 マダガスカルの国家警察・憲兵隊・地区警察と地区住民との間には、国家が死刑制度の廃止を決定した事に伴う緊張状態が存在し、その点に自主治安組織や私刑的制裁の発生源があるものと推測され、調査を継続してゆく計画である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
2018年11月~12月の間に大統領選挙が実施されたにもかかわらず、当初予想されたそれに伴う混乱等もほとんど起きる事がなく、当初予定していたマダガスカル現地における調査を二回、計三ヵ月ほど実施する事ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
マダガスカル現地における聞き書きに基づく臨地調査と公文書館や図書館における文献調査の双方を継続してゆき、住民の自主的治安対策や損害に対する賠償の具体的な事例を蓄積する事によって、「負債の回復をめぐる観念」を明らかにしてゆきたい。
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