2018 Fiscal Year Research-status Report
現代インドにおける環境政策・環境運動・宗教実践の多元的展開に関する人類学的研究
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18K01170
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
石井 美保 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (40432059)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 環境問題 / 自然保護 / インド / 狩猟採集 / 精霊信仰 / 指定トライブ / 野生動物 / 文化人類学 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度の主要な研究実績として、以下の点が挙げられる。2018年9月と2019年3月の二度にわたり、インド・カルナータカ州Uttara Kannada District, Joida Talukを中心に、計1ヶ月間にわたる現地調査を行った。2018年9月の調査では、Uttara Kannada Districtの国立公園指定地域を中心に広域調査を行い、現地の社会運動家や研究者と交流しつつ、調査地の選定を進めた。2019年3月の調査では、Joida Talukの国立公園指定地域に焦点を当て、この地域に住むKudubiの人々へのインタビューを集中的に行なった。Kudubiの人々の多くは森林内部に居住し、長らく焼畑耕作によって生計を立ててきた。また宗教儀礼と深く結びついた(限定的な)狩猟は、彼らの生活において重要な意味をもっていた。しかし、森林と野生動物の保護を目的とする法律の度重なる施行と改定・拡充によって、彼らの生活は根本的な変容を余儀なくされていることが、今回の調査から明らかになった。また、このような窮状にありながらもKudubiの人々は指定トライブ(the Scheduled Tribe)としての認定・インフラの整備・教育への援助等をめぐって地道な運動をつづけていることが明らかになった。今後、Joida地域を中心に現地調査を続行し、Kudubiの人々への聞き取りを続けるとともに、人々と野生動物との関係、生業としての養蜂、森林と結びついた精霊信仰を中心とする儀礼実践についても調査を広げていきたい。また、大学機関と連携しつつ、カルナータカ州におけるKudubiの人々や国立公園の位置付けについて包括的な調査を進めていきたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
2018年9月と2019年3月の現地調査を通して、予想以上に多くの環境運動家や研究者、そしてKudubiの人々と出会い、聞き取り調査を実施することができた。なかでも野生動物保護区において今なお暮らしているKudubiの人々への聞き取りを通して、彼らの生活の近年の変化(その多くは野生動物保護に関する法律の施行によってもたらされたものである)について、具体的な情報を得られたことは貴重な成果であったといえる。また、人々にとっての精霊信仰と野生動物との関係についてもある程度のイメージをつかむことができた。この研究成果に基づき、次年度以降はクドゥビの人々の生活実践について調査研究を深め、同様に自然保護法による人権侵害が指摘されている他地域の事例との比較につなげたい。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は引き続き、Uttara Kannada District, Joida Talukの国立公園指定地域を主な調査地として、クドゥビの人々についての調査研究を進めていく。具体的には、1)指定トライブの認定をめぐるクドゥビの人々の運動、2)精霊信仰と野生動物との関係、3)焼畑耕作、養蜂、水田稲作の実践 について調査を進めるとともに、行政側に立つ人々にも聞き取り調査を行い、より重層的な資料の収集に勤めたい。
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