2021 Fiscal Year Research-status Report
現代インドにおける環境政策・環境運動・宗教実践の多元的展開に関する人類学的研究
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18K01170
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
石井 美保 京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (40432059)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | インド / 環境保全 / トラ保護区 / 部族民 / 環境運動 / カルナータカ州 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は昨年度と同様、新型コロナウイルスの流行による渡航制限等のために、予定していた南インド・カルナータカ州北西部に位置する自然保護区での現地調査を実施することができなかった。しかしながら、これまでの調査で収集した一次データや資料を整理するとともに、自然保護・多種間関係・ポリティカルエコロジー等に関する関連文献を渉猟して理論的視座を深めることができた。本研究の主要なテーマである人間と環境の関係と、そこに介在するさまざまな政治権力や作用をめぐる問題は、コロナ禍においてより顕著に観察・分析されうる対象になったといえる。そうした問題意識から、SARS-CoV-2と種間倫理をテーマとする英語論文を執筆し、国際学術誌であるCurrent Anthropologyに発表した。この論文において提示した、種間の過剰な接近や介入に伴う問題と、禁忌や儀礼によって維持・現実化される種間倫理というアイデアは、本研究においても重要性をもつ。また、The Sixth Biennial Conference of East Asian Environmental History (EAEH 2021)において、“Conservation, Environmentalism, and Imagined Nature in India”と題したパネルを組み、他大学の研究者とともに研究発表を行った。このパネル発表を通して得られた知見、なかでもインドにおいて環境問題を中心に調査を進めている研究者であるJenia Mukherjee氏からいただいたコメントは、今後の研究にとって重要な示唆に富むものであった。今後はインドにおける感染状況を見極めつつ、現地調査を進めて環境運動・環境政策・宗教実践に関する一次データを取得することを目指したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は昨年度と同様、コロナ禍のために当初予定していたインド・カルナータカ州北西部での現地調査を実施することができなかった。しかしながら、これまでの調査で収集したデータを整理するとともに、自然保護・多種間関係・ポリティカルエコロジー等に関する関連文献を渉猟して理論的視座を深めることができた。また、人獣共通感染症と種間倫理に関する理論的検討を中心とした英語論文の執筆を通して、本研究における理論的枠組を明確化することができた。さらに、The Sixth Biennial Conference of East Asian Environmental History (EAEH 2021)において、“Conservation, Environmentalism, and Imagined Nature in India”と題したパネルを組み、他大学の研究者とともに研究発表を行うことを通して、現代インドにおける環境問題に関する多角的な視座を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後はインドにおける感染状況を見極めつつ、カルナータカ州北西部のトラ保護区における調査を進め、環境運動・環境政策・宗教実践に関する一次データを取得することを目指したい。ただし、今後の新型コロナの流行状況によっては、自然保護区内にある受け入れ先の意向により、当初予定していた場所での調査が困難となる場合も予想される。その場合は、同じくカルナータカ州の沿岸部であるマンガルールで調査を行うなど、調査地については柔軟に対応できればと考えている。
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Causes of Carryover |
昨年度は新型コロナウイルスの流行に伴う渡航制限によって、当初予定していたインド・カルナータカ州での現地調査を実施することができなかった。今年度は、現地における感染状況や受け入れ状況を見極めつつ、カルナータカ州北西部のトラ保護区での実地調査を行い、予定通り予算を執行したいと考えている。
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