2018 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
18K01173
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
渥美 一弥 自治医科大学, 医学部, 教授 (30646344)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
星野 晋 山口大学, 国際総合科学部, 准教授 (00259649)
浮ヶ谷 幸代 相模女子大学, 人間社会学部, 教授 (40550835)
小谷 和彦 自治医科大学, 医学部, 教授 (60335510)
佐藤 正章 自治医科大学, 医学部, 准教授 (70382918)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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Keywords | 地域医療 / 文化人類学 / フィールドワーク / 医学教育 |
Outline of Annual Research Achievements |
2018年度の本課題研究は以下の状況である。渥美は自治医科大学の卒業生で、在学中渥美の選択セミナー「文化人類学研究」を受講し、現在地域医療で活躍中の医師に連絡を取り、本研究の理解と協力を確認した。これにより、学生時代に文化人類学を学びフィールドワークについて知識を持つ医師が臨床経験を積む時に文化人類学の視点がどのように生かされていたか事例を集める下地ができた。 佐藤と浮ケ谷は2018年度自治医科大学夏季院外実習で山形県の実習先において学生たちや担当医師、患者から地域医療における「文化」の重要性に関する情報を集めた。星野は、山口県の地域医療における自治医科大学の夏季院外実習において、実行委員である自治卒業生医師たちと協働し、院外実習の企画者の教育、医療に対する姿勢を調査し、地域における医療と医学教育に関する提案を計画中である。さらに浮ケ谷と星野は、小谷が企画する自治医科大学臨床教員対象の研修会において、「文化人類学と医療」「文化人類学におけるフィールドワークの意味」について発表し、臨床教員に「文化人類学と地域、医療、フィールドワーク」についての基礎概念を提供した。 さらに、2018年11月3日、4日に行われたMEDC第70回医学教育セミナーとワークショップにおいて、「地域医療と文化人類学」と題するワークショップを企画実行した。医学部生のモノの見方や医療従事者が臨床現場で出会う苦悩などを題材にして「臨床と結びつけて、医療人類学、文化人類学をどのように教えていくべきか検討した。渥美はここ十数年間における自治医大学の変化、医学生に文化人類学を学ぶ下地の変化を報告した。星野は文化人類学におけるフィールドワークの意味を再考し、医療と文化人留学の結びつきを具体的に考察した。佐藤は臨床医の立場から「文化人類学」という学問が医師の自らの役割に対する客観的視点獲得に、如何に有効か考察した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は研究の基礎作りの年と考えられる。渥美は十数年自治医大生に文化人類学を教えてきた経験と、自治医科大学の特徴である6年間指導教員について自由に学ぶことができる選択セミナーをいう制度を通して6年間文化人類学を教えた卒業生を持っている。その卒業生たちがどのように医療活動と文化人類学で学んだことを結び付けているのか明確にするのが本研究における渥美の役割である。その基礎作りは本年にできたということができる。 浮ケ谷と星野は医療人類学や文化人類学の医学教育における有効性の研究について多大な実績を持ち、その分野では指導的立場にいる人類学者である。その二人に自治医科大学の夏季実習に参加してもらい、へき地医療の現場と医学教育に文化人類学及びフィールドワークの実践をどのように取り入れていくべきかという課題に対し2018年度は現場に身を置いてもらうという経験ができたことが次のステップへの架け橋になると考えられる。自治医科大学の医師の中で最も文化人類学に興味を持ち柔軟な発想をする佐藤は独自のスタンスで文化人類学を学んでいる。佐藤が医療人類学の専門家浮ケ谷と、母校の自治医科大学の夏季実習に参加した意義は大きい。また、地域医療学の重責を担う小谷が本研究に地域医療学の専門家として文化人類学を理解していく過程も極めて重要である。2018年度にMEDCのワークショップにおいて、文化人類学者と協働した経験は本研究にしっかりとした基盤づくりができたことを意味している。
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Strategy for Future Research Activity |
2019年度は、本研究の中核をなす。渥美は卒業生たちのインタビューを続行し、より詳細に文化人類学の教育を受けた医師がどのように医療現場を見、生き抜いているのか事例を集める段階に入った。浮ケ谷は自らのフィールドである北海道浦河町における医療人類学的調査で得られた知見を本研究にも導入し、独自の展開をしていくものと考えられる。星野は自治医科大学における地域医療学の実践の推進者である自治医科大学山口県人会出身の医師たちとともに、地域医療におけるフィールドワークを通して新たな視点を医学教育に展開してくものと考えられる。佐藤は浮ケ谷、星野という医療人類学の二大巨頭から学ぶ人類学的視点の医学教育への導入を視野に入れて研究を続けていくことになる。これを小谷が地域医療学の最先端の情報と結びつけて新たな教育の提案をしていく理論的バックボーンを築く年となる。
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Causes of Carryover |
2018年度は、予備調査の段階であり、各研究者がそれぞれの担当地域に関する基礎情報を入手することに主眼が置かれていた。そのために交通費等もそれほどかかってはいなかった。2019年度は前年度で得た情報と人的ネットワークを本格的に辿っていき、より濃密な調査を行う予定である。例えば、2018年度は自治医科大学の夏季実習における参与観察が中心であったが、2019年は、前年度に得た情報をもとに多くの場所(例えば、2018年度に知遇を得た医療者や学生が所属する機関)に出かけ、より多くのインフォーマント(最初の人から次々に紹介を受け増加していく情報提供者)にインタビューすることになる。 それらをまとめて、昨年度より繰り越した予算をより詳細な調査と出版の準備(原稿書きとその校正、編集に外部の人材を依頼する予定)に使用することになる。
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Research Products
(3 results)