2022 Fiscal Year Annual Research Report
Colonialism and Peacebuilding : Focusing on the oral life histories of Indigenous People as Internally Displaced People
Project/Area Number |
18K01176
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Research Institution | Seikei University |
Principal Investigator |
細谷 広美 成蹊大学, 文学部, 教授 (80288688)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 先住民/先住民族 / アンデス / 国内避難民 / オーラルヒストリー / ペルー / 植民地主義 / 平和構築 / 新型コロナウイルス |
Outline of Annual Research Achievements |
ペルーの紛争(1980-2000)では約7万人が犠牲になり、そのうち75%が先住民(先住民族)の人々であった。紛争以前は先住民の多くはナショナルアイデンティを有さなかった。しかし、紛争によって国内避難民となり都市部に流入し、さらに平和構築過程で国家機関や国内外のNGOと関わることで、国家や国際社会との密接な関係が生まれた。本研究は、従来の紛争研究で見落とされてきた紛争と平和構築という特殊な文脈での異文化遭遇プロセスを、国内避難民となった先住民のライフヒストリーを調査することで、人々が自らの経験をどのように解釈し、それに基づきどのような生存戦略を展開してきたかを連続的にとらえ明らかにし、異文化間関係下での平和構築を検証した。 新型コロナウイルス感染拡大により、海外調査ができなかったため最終年度に調査期間を延長したが、パンデミックは人種主義や新自由主義の経済政策の推進による社会的分断を顕在化させており、平和構築の課題がより明確になった。ペルーは人口当たりの新型コロナウイルスによる死者数が世界最大となっている。政府による非常事態宣言でステイホームが可能だった層は限られており、国内避難民が多く居住する都市の貧困地区の人々は収入源を絶たれ、医療サービスが届かないなか飢餓と水不足に襲われた。このため、徒歩で帰郷した家族も少なくなかった。また、国内避難民の新世代で、ニューヨーク・タイムズ紙において「ケチュア・ラップの女王」と称されたZ世代のレナ―タ・フローレスさんにインタビューをした。パンデミックにより利用が拡大したSNSを活用する新しい世代の動向は今後の研究課題である。 成果発信として国内外の学会やシンポジウムで発表するとともに、論文を複数言語で刊行した。社会的還元として先住民国内避難民を扱った映画の紹介や映画祭での解説、国立民族学博物館で紛争を扱った先住民芸術家たちの作品展示をした。
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Remarks |
ドキュメンタリー映画『Lucanamarca』の日本語字幕監修 国立民族学博物館特別展「ラテンアメリカの民衆芸術」実行委員
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