2021 Fiscal Year Research-status Report
An Anthropological Heritage Study on Human Towers in Catalunya, Spain
Project/Area Number |
18K01178
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
竹中 宏子 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (30376967)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 人間の塔(Castells) / 祝祭 / 身体性 / カタルーニャ / アソシエーション / 正統的周辺参加(LPP) / 十全的参加者 / 潜在的成員 |
Outline of Annual Research Achievements |
2020年度に引き続き、今年度もCOVID-19感染拡大の影響でほとんどの実演が行われず、それに伴い練習も行われない状況であった。そのため本研究の中心となるフィールドワークは実施できず、文献調査を中心に研究を進めた。その間のチームの動きは、SNSを通じて送られてくる情報で確認していた。それによると、食事会などは徐々に再開し始めている動向がつかめた。実演も年度末、つまり、2022年3月から再開されたようだが、その連絡自体、同月に入ってきたので、フィールドに赴く準備が間に合わなかった。成果発表に関しては、昨年度に投稿した論文が発刊され(*)、そこでは正統的周辺参加(LPP)論を用いながら、従来あまり着目されてこなかった「十全的参加者」に焦点を据え、一見チームにとって利益をもたらさないように思える「潜在的成員」の性質と重要性を議論したものである。また、コロナ禍における人間の塔の活動に関する変化や継続性に関する口頭発表を行った。それは、日本国内の他の祭りの状況との比較となるべく、コロナ禍における人間の塔チーム「サンツ」の活動と復帰に向けた努力を報告する内容だった。 このように人間の塔に関する考察を進めることは困難であったが、コロナ禍の祝祭に関するシンポジウムを主催し、コーディネーターとして祝祭研究に関する議論を深めた(**)。それは本研究の今後の計画にも活用していく所存である。 *竹中宏子 2020「人間の塔チーム「サンツ」における十全的参加者のあり方と位置づけ:潜在的成員に着目して」『生活学論叢』38号、pp.44-55 **「ポストコロナの祝祭を考える:伝統、ヴァーチャル、『生感』」:11月6日@早稲田大学所沢キャンパス+Webiner
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
COVID-19感染拡大の影響で、予定していたフィールドワークが実施できなかったことによる、研究の遅れである。
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Strategy for Future Research Activity |
感染症による渡航規制は続くであるだろうが、実演が再開されたという情報を得たので、フィールドワークに関しては可能な限り実行する予定である。参与観察や聞き取り調査などから得られた情報とそれまでの文献調査を総合的に考察していく。文献調査については、基本的にはこれまでの成果を基にするが、現在新たにナショナリズム(あるいはリージョナリズム)の理論的枠組みも検討の必要性があると考えているので、そういった文献も検討に入れたい。 フィールドワークに関しては、特に、1)人間の塔が世界無形文化遺産(2010年)に登録される過程、2)人間の塔のグループ「サンツ」の沿革とそれが位置する街区の歴史・社会的詳細、3)「サンツ」のメンバーが人間の塔を通じて目指すものと、カタルーニャ主義との関係、4)「サンツ」のメンバーの人間の塔への関わり方と、カタルーニャ人間の塔連盟の理想との共通点と相違点、5)COVID-19による「サンツ」の活動への影響、6)他の人間の塔チームとの比較研究、を中心に研究を推進していく予定である。 現在同時進行している祭り・祝祭に関する学内の研究プロジェクト(人総研Aプロ「『人間らしさ』と『つながり』を再創造するための祭り・祝祭に関する研究拠点」)からも、本研究に応用できる部分は取り込んでいく予定である。特に当プロジェクトは文理融合・学際的に構成されているので、領域を超えた視点も本研究に活かしていきたい。また、人間の塔の研究としての意義を探究すべく、「サンツ」のみならず、他のチームとの比較研究も進める予定である。そこでは存在論的人類学の視点も参考にしながら、新規的なエスノグラフィを編む試みを行いたいと考える。
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Causes of Carryover |
COVID-19感染拡大の影響で、予定していた海外調査ができなかったため。
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