2022 Fiscal Year Annual Research Report
An Anthropological Heritage Study on Human Towers in Catalunya, Spain
Project/Area Number |
18K01178
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
竹中 宏子 早稲田大学, 人間科学学術院, 教授 (30376967)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 人間の塔(Castells) / 祝祭 / 民俗文化 / カタルーニャ / アソシエーション / 多様性 / ジェンダー |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、本研究の対象となる人間の塔チーム「サンツ」の練習再開に伴い、2年ぶりに現地調査(参与観察、聞き取り調査)を行うことが可能となった。そこでは複数のチームについても調査し、「サンツ」との比較を通して人間の塔という文化現象の特徴を捉えられた。 人間の塔とカタルーニャ主義の関係性について、主に聞き取り調査から、「人間の塔=カタルーニャ主義の象徴」ではなく、チーム毎の多様な関係性を捉えた。カタルーニャ主義を全面的に支援するチームがある一方、サンツは個々人の思想を尊重し、チームとしての政治的な参加には消極的である。チームの方針は総会などの審議を経て決定となるので、政治との距離は一貫したチームの主義ではないことも把握した。また、聞き取り調査の中で、人間の塔の「伝統的地域」(カタルーニャ南部)と「非伝統的地域」(カタルーニャ北部)によって、塔を建てる意味や個人にとってのチームの重みが違うこと、チームのあり方にも違いがあることがわかってきた。伝統的地域のチームは、隔年開催の競技的な「人間の塔コンクール」の上位を占め、民俗文化としての人間の塔の代表であり、「顔」でもある。しかし、技術の向上や、社会変化や多様性に対応したアソシエーションとしての工夫などについては、北部の非伝統的地域の方に目立った動きが見られると言える。サンツについては、特にジェンダーの点で顕著で、女性のみの塔を建てる初めての、そして唯一のチームである。既に、人間の塔が社会的に建てられる点については論文として発表したが、その点を深め、ジェンダーの視点を入れながら、最終的にカタルーニャの民俗文化の社会性を考察するつもりである。 更に、2022年度はカタルーニャ文化から祭り・祝祭を理論的に考察する目的で、カタルーニャから2名の人類学者を呼び、講演会「スペイン・カタルーニャの研究者に学ぶ祭り・祝祭研究の新たな視点」を行った。
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