2018 Fiscal Year Research-status Report
The Applied Anthropological Study on the Ethnographic Filmmaking on Intangible Cultures in Africa
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18K01181
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
川瀬 慈 国立民族学博物館, 人類基礎理論研究部, 准教授 (30633854)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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Keywords | 映像人類学 / アフリカ / 無形文化 / 民族誌映画 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成30年度はアフリカ現地でのフィールドワーク、出版、国際会議の企画、実行等、インプット、アウトプット両面を積極的に行うことができた。 まず、8月のエチオピア北部でのフィールドワークにおいて、ティグレイ州メケレで活動を行うゴンダール出身のアズマリ、ムカット・ムルカン氏による演奏活動を映像記録した。特に、結婚式をはじめとする祝祭儀礼の場における地域社会の人々と芸能者の相互行為について詳細に記録できた。今後編集を行い民族誌映画を制作する。 出版関係では、世界思想社より、単著『ストリートの精霊たち』を出版した。本書は、これまで川瀬が民族誌映画による記録の対象としてきたエチオピア北部の芸能者等と川瀬との交流や関係性の変化を主なテーマとしている。平成30年度は、川瀬が制作した過去の民族誌映画の上映と本書の解説を組み合わせる形で、各地で上映、講演活動を繰り広げた。 10月の国際エチオピア学会研究大会(於:エチオピア、メケレ大学)では、エチオピア無形文化の人類学的な映像記録をテーマにした民族誌映画上映プログラムを主宰者として企画、実行した。本プログラムでは、エチオピア、ドイツ、米国、ノルウェーの映像人類学者とともに、互いの学術映像の視点、アプローチ、さらには作品の保管や活用のありかたについて、2日間にわたり、密に議論できた。また12月には、第58回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展の日本館展示を担当する人類学者等とともに京都人類学研究会・季節例会シンポジウム『人類学とアートの協働』を開催した。本シンポジウムでは、制作実践に基軸をおいた文化人類学者、アーティスト、キュレーター間の領域横断的な議論を行い、人類学な映像制作実践におけるアートの語法の援用について意見交換できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主なフィールドワークと撮影の拠点となるエチオピアでは2018年、ハイレマリアム・デッサレイン首相の突然の辞任という予期せぬ出来事が起きた。その後、新首相の誕生にともなう、政治・経済のあらゆる局面での情勢の不安定化を予測する声もあった。しかしながら、新首相アッビェ・アフメッドによる、政権の運営は予想以上に順調であり、特に目立った問題等はおこっていない。そのようななか、平成30年度のエチオピア現地でのフィールドワークは、戸外での調査・撮影活動を中心とする内容であったが、トラブルなく遂行することができた。その背景には、ティグレイ州観光文化局局長ダニエル・ハイル氏をはじめとする当局関係者の強力なサポートが挙げられる。エチオピア、ティグレイ州の州都メケレ、さらには近郊の地方都市での調査や撮影に関しては、観光文化局による関係各位への調査・撮影協力依頼証が発行された。現地語(ティグレ語)で記された依頼証のおかげで、調査地の人々の理解も得やすく、調査・撮影は極めてスムーズに実行することができた。また平成30年度は、単著『ストリートの精霊たち』(世界思想社、2018年)の出版や、それに伴う国内での上映・講演活動、国際エチオピア学会での民族誌映画プログラムの実施等、積極的に研究内容の社会的な還元を行うことができたといえる。以上より、本研究課題については、現時点ではおおむね順調にすすんでいると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
前年度にエチオピア北部で撮影したフッテージを今年度のエチオピア現地のフィールドワーク時に関係者にフィードバックし、楽器の奏法や歌唱の分析、歌詞の翻訳をすすめる。同時に、以上のフッテージをベースに民族誌映画の編集を行う。フィードバック上映を行う対象としては被写体となった芸能者や地域社会のコミュニティ、さらには無形文化保護局の関係者を予定している。様々なアクターの視点から記録映像をまなざし、議論することによって無形文化を支える技能について多角的に分析する。 8月にポーランドのポズナン市で開催される国際人類学・民族学科学連合(IUAES)中間会議において映像人類学に関するパネルを組織し、アフリカ無形文化の映像記録の方法論をテーマにした発表を行う。さらに、10月に北京の中国社会科学院において開催されるIUAES映像人類学理事会が主催する国際会議において同様の発表を行う予定である。
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Causes of Carryover |
当初の予定より、旅費(エチオピア渡航費)が安くなったため、翌年度の使用額7,554円が生じた。この額は、令和元年度の旅費に使用予定である。
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Research Products
(5 results)