2021 Fiscal Year Research-status Report
An Anthropological Study of the Genesis of 'Negative Heritage' in the Post-Conflict Era of Minamata City
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18K01182
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Research Institution | National Museum of Ethnology |
Principal Investigator |
平井 京之介 国立民族学博物館, グローバル現象研究部, 教授 (80290922)
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Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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Keywords | 水俣病 / 博物館 / 負の遺産 / 記憶 / 水俣 |
Outline of Annual Research Achievements |
令和3年度は、水俣病センター相思社、水俣病を語り継ぐ会、水俣市、熊本県などを対象に、1990年代に水俣地域で水俣病を伝える活動が生成した経緯に関する約2ヵ月間の現地調査を実施した。現地調査は主に次の2段階に分けて実施した。第一に、水俣病センター相思社に付置されている資料室において、1990年代に相思社と行政が共同でおこなった事業に関するデータを収集した。第二に、当時、それらの事業において中心的な役割を果たした市民を対象にインタビューを実施し、主要な事業が立案され実行に移される経緯について詳細なデータを収集した。新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、3ヵ月間を予定していた調査期間を短縮せざるをえなかったが、それでも全体として、もやい直し、1995年政治決着、環境創造みなまた推進事業、水俣病関連資料データベース、水俣病犠牲者慰霊式など、1990年代以降に被害者関連団体と行政とが協働しておこなってきた水俣病を伝える活動の歴史について多くの貴重なデータを収集することができた。その後、収集したデータの整理と分析を進め、研究成果発表の準備を進めた。なお、研究成果の一部として、論文「小規模ミュージアムの資料管理――水俣病歴史考証館の事例から」を執筆し、論文集の一章として投稿した。さらに、1990年代から2000年代にかけて水俣病センター相思社が行政と協働で水俣病を「負の遺産」として保存・活用するようになった経緯について、これまでに収集したデータをまとめ、研究論文として発表する準備を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
新型コロナウイルス感染症拡大の影響により、令和2年度に現地調査がまったく実施できなかったため、令和3年度にその分も含め、計3ヵ月間の現地調査を予定していた。しかし令和3年度も新型コロナウイルス感染症拡大の影響があり、現地調査は約2ヵ月間しか実施できなかった。そのため、最終的なとりまとめをおこなうだけの十分なデータを収集することができず、1年間の補助事業期間延長を申請することとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
令和4年度は、令和3年度に予定していて実施できなかった、負の遺産の活用による社会への影響に関する2ヵ月間程度の現地調査を実施する予定である。水俣病センター相思社の資料室における文献調査、および水俣病を伝える活動に参加してきた市民のインタビュー調査を継続し、これまでに蓄積されたデータを補足する。また、1990年代から2000年代にかけて水俣病センター相思社が行政と協働で水俣病を「負の遺産」として保存・活用するようになった経緯について、これまでに収集したデータを研究論文としてまとめ、学術雑誌で発表する予定である。
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Causes of Carryover |
令和2年度に続き、令和3年度も新型コロナウイルス感染症拡大の影響があったため、予定していた現地調査を十分に行うことができず、次年度にその分の現地調査を延期して実施する予定である。
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