2019 Fiscal Year Research-status Report
The Analysis of the Melodic Structure of Ainu Traditional Music and the Basic Research into the Materials of Northern Peoples' Musics for the Prospective Comparative Studies
| Project/Area Number |
18K01183
|
|---|
| Research Institution | Hokkaido Museum |
|---|
Principal Investigator |
甲地 利恵 北海道博物館, アイヌ民族文化研究センター, 研究員 (20761638)
|
|---|
| Project Period (FY) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
| Keywords | アイヌ音楽 / 北方諸民族 / 芸能 / 映像資料 / 音声資料 / 採録 / 民族音楽学 |
|---|
| Outline of Annual Research Achievements |
前年度に続き大きく3つの領域による研究計画に沿って進めた。
（1）アイヌの歌の旋律構造の分析：既存のアイヌ音楽音声資料の内容分析の一環として「神謡」と呼ばれる語り物音楽を対象に、神謡「iwakahore」の旋律分析・分類を試みた。かつての方法は、サケへなどと呼ばれる詩句と物語の本文１行を歌い語る際の、実際に使われた音の音高を出現順に抽出しその音の並びを旋律型として分類するものであったが、旋律全体の拍節との関係は捨象される欠点があった。そこで今回新たに次の方法で「iwakahore」を分析し旋律型を分類した。すなわち、①サケヘ句１行のとるリズムを軸に全体の拍節を仮定 ②旋律構成音を仮に移動ド方式の呼称に読み替え個々の旋律型の仮名称とし ③②の最終音よって大分類→①での拍節の各拍頭に来た音の並びで中分類→②での個々の旋律型で小分類という方法である。これにより「iwakahore」の旋律は「レ」終止型11種類76行・「ソ」終止型５種類22行・「ラ」終止型1種類１行・「ド」終止型1種類１行 となる。これと関連資料の結果比較も含め、2019年10月に学会発表。
（2）アイヌ音楽及び関連する北方諸民族の芸能に関する情報収集：芸能情報を収集するにあたり、これまでとくに着手してこなかった楽器・音具の情報収集も今後意識していくべきことから、まずアイヌのシカ笛などをはじめさまざまな民族の狩猟用音具についての研究実績を有する枡谷隆男氏より知見の提供、情報収集にあたっての助言等を求めた。併せて、枡谷氏が収集した楽器・音具資料の一部について調査を実施し、楽器の比較研究に必要な知見の提供を受けた。その成果の一部は北海道博物館第17回企画テーマ展「楽器 見る・知る・考える」に反映させる予定。
（3）北方諸民族の芸能を記録した音声・映像資料の所在（国内）調査：これについては2019年度は特段の進捗をみなかった。
|
| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
（2）アイヌ音楽及び関連する北方諸民族の芸能に関する情報収集
2019年度内に実施予定だった、既存の音声資料のデジタル化と内容調査ができず、次年度に繰り越すこととなった。
（3）北方諸民族の芸能を記録した音声・映像資料の所在（国内）調査
谷本一之氏資料に係る調査や、当該資料所蔵館である国立民族学博物館との協議など、具体的な進捗をはかることができなかった。
|
| Strategy for Future Research Activity |
（1）アイヌの歌の旋律構造の分析：アイヌ音楽における旋律と言葉との関係を「神謡」の語りの旋律構造に関する分析を通じて考察するため、方法論の点検と同時に、複数の対象を分析し比較する段階に持っていく。
（2）アイヌ音楽及び関連する北方諸民族の芸能に関する情報収集：
・2019年度内に実施予定だった、以前参加した科研費調査で採録したコリヤーク芸能ほかの映像（Hi8）等のデジタル化をおこない保存活用をはかる。
・これまで積極的には関わってこなかった楽器・音具の情報収集も視野に入れるべく、楽器学や音楽考古学の専門家の知見を得る（公開講座等を予定していたが実施時期については延期・未定）
（3）北方諸民族の芸能を記録した音声・映像資料の所在（国内）調査：谷本一之氏の資料内容整理を進める。
|
| Causes of Carryover |
既存の採録資料のデジタル化を進める予定であったが、デジタル化の形式や方法についてなお情報収集を要し、年度内の実施ができなかった。また、音楽分析作業において用いる楽譜作成用ソフトウェアを購入予定であったが、既存のフリーソフトでも当面の作業には支障のないことを確認できたため、なお高度な譜面作成が必要になった段階で改めて検討することとし、購入は見合わせた。
2020年度には、既存資料のデジタル化を実施する（委託を予定）。また、（3）にかかる情報整理を進める上で、人件費の支出を予定。
|
Research Products
(1 results)
